「フリーランスは経費が使えるから得」「会社員は保険料を会社が半分持ってくれるから得」。どちらも本当です。では実額でどちらの手取りが多いのか、同じ600万円で比較してみます。

売上600万円のフリーランス vs 年収600万円の会社員

フリーランス側は経費1割・青色申告(65万円控除)・国民年金・国民健康保険という標準的な条件、会社員側は独身・40歳未満で比較すると、おおよそ次のようになります。

フリーランス(売上600万)会社員(年収600万)
社会保険・年金約76万円(国民年金+国保)約88万円(厚生年金+健保等)
税金(所得税+住民税)約56万円約46万円
個人事業税(業種による)約12.5万円なし
手取り約395万円約466万円

国民年金は令和8年度の月17,920円、国保は自治体で差が大きいため所得割11%+均等割7万円の目安で計算した概算ですが、名目が同じ600万円なら会社員の方が手取りは多くなります。会社員は社会保険料の半分を会社が負担し、給与所得控除も自動でつくためです。

フリーランスの手取りの計算方法(5つのステップ)

会社員は給与明細の「差引支給額」が手取りですが、フリーランスは売上から自分で引き算する必要があります。手取り=売上−経費−社会保険料−所得税−住民税−個人事業税で、次の順に計算します。

  1. 事業所得を出す: 売上−経費−青色申告特別控除(e-Taxなどの要件を満たせば65万円)
  2. 社会保険料を出す: 国民年金は令和8年度で月17,920円(年215,040円)。国保は前年の所得から住民税の基礎控除43万円を引いた額に、自治体の所得割率を掛け、均等割などを足します
  3. 所得税を出す: 事業所得−社会保険料−基礎控除などで課税所得を出し、税率(5〜45%)を掛けて、2026年分は2.1%の復興特別所得税を上乗せします。2026年分の基礎控除は合計所得489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円です
  4. 住民税を出す: 住民税の基礎控除は43万円のままなので、所得税より課税所得が大きくなります。課税所得の10%に均等割を足すのが目安です
  5. 個人事業税を出す: 法定業種なら、青色申告特別控除を引く前の所得から事業主控除290万円を引き、多くの業種は5%を掛けます

冒頭の売上600万円・経費60万円の例をこの手順で計算すると、次のとおりです(国保は所得割11%+均等割7万円の目安)。

項目計算金額
事業所得600万−60万−65万475万円
国民年金17,920円×12か月約21.5万円
国民健康保険(475万−43万)×11%+7万約54.5万円
所得税(復興税込み)(475万−76万−104万)≒295万に税率10%など約20.2万円
住民税(475万−76万−43万)≒356万の10%など約35.8万円
個人事業税(475万+65万−290万)×5%12.5万円
手取り540万(売上−経費)から上の合計を引く約395万円

注意したいのは、国保・住民税・個人事業税は前年の所得をもとに翌年かかる点です。独立1年目は会社員時代の所得で国保と住民税が決まり、手元の現金と計算上の手取りがずれます。上の手順で出した税と保険料の額を、その年のうちに取り分けておくと翌年の支払いに備えられます。なお、払った個人事業税はその年の経費になります。

ただし比較の土俵が違う

会社員の「年収600万円」を雇うために、会社は社会保険料の会社負担分を含めて実質690万円前後を払っています。フリーランスが会社員と同じ生活水準を目指すなら、売上は前職年収の1.2〜1.3倍が最低ライン、と言われるのはこのためです。さらに厚生年金と国民年金では将来の受給額に大きな差があり、フリーランスは退職金もありません。

フリーランスが手取りで並ぶには

使える武器は、①経費計上、②青色申告65万円控除、③小規模企業共済(掛金は月7万円・年84万円まで全額所得控除)、④iDeCo(フリーランスは月6.8万円まで。2026年12月分からは国民年金基金と合わせて月7.5万円まで)、⑤法人化(利益800万円前後から検討)あたりです。①〜④をフル活用すると、同じ売上でも手取りは数十万円変わります。

自分の売上・経費での手取りはフリーランスの手取り計算機、会社員に戻る場合の必要年収は逆算計算機で確認できます。

出典: 日本年金機構 国民年金保険料、国税庁 No.2072 青色申告特別控除、国税庁 No.1135 小規模企業共済等掛金控除、中小企業基盤整備機構 小規模企業共済 掛金について、厚生労働省 iDeCoの概要、厚生労働省 確定拠出年金 2025年の制度改正、国税庁 No.1199 基礎控除、国税庁 No.2260 所得税の税率、国税庁 No.2210 必要経費の知識、東京都主税局 個人事業税、世田谷区 国民健康保険料の計算方法、総務省 個人住民税の基礎控除等について