会社を辞めて次の勤務先の健康保険にすぐ入らない場合、多くの人は前の健康保険の任意継続か住んでいる市区町村の国民健康保険(国保)のどちらかを選びます。家族の扶養に入れる人を除けば、この二択です。どちらが安いかは人によって逆転するため、「任意継続のほうが安い」「国保のほうが安い」と一律には言えません。この記事では、両方の保険料がどう決まるかを整理し、2026年度の料率で計算例を示したうえで、比べる手順をまとめます。

任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額×料率」で決まる

任意継続は、退職前の健康保険に最長2年間入り続けられる制度です。協会けんぽの場合、退職日までに健康保険の加入期間が継続して2か月以上あり、資格を失った日(退職日の翌日)から20日以内に申し出ることが条件です。期限を1日でも過ぎると加入できないので、比べるための時間は実質3週間弱しかありません。

保険料は、退職時の標準報酬月額に、住んでいる都道府県の料率を掛けて計算します。在職中は会社が半分を負担していましたが、任意継続では全額が自己負担になります。そのため、在職中の給与明細の健康保険料の約2倍が目安です。ただし協会けんぽでは標準報酬月額に上限があり、2026年度(令和8年度)の上限は32万円です。退職時の標準報酬月額が32万円を超えていた人は、32万円として計算されます。

協会けんぽ東京支部の2026年度の料率で計算すると、次のようになります。健康保険料率9.85%に、2026年4月分から加わった子ども・子育て支援金率0.23%を足し、40〜64歳はさらに介護保険料率1.62%を足します。

退職時の標準報酬月額39歳以下(10.08%)40〜64歳(11.70%)
26万円月26,208円月30,420円
32万円以上(上限)月32,256円月37,440円

上限があるため、在職中の給与が高かった人ほど任意継続が割安になりやすい構造です。標準報酬月額の決まり方は標準報酬月額とは?で詳しく解説しています。

国保の保険料は「前年の所得」と「加入する人数」で決まる

国保の保険料は市区町村ごとに計算方法と料率が違います。多くの自治体では、所得に応じてかかる所得割、加入者1人ごとにかかる均等割、自治体によっては世帯ごとにかかる平等割を合計します。2026年度からは、医療分・後期高齢者支援金分・介護分に加えて子ども・子育て支援金分も上乗せされています。

所得割の元になるのは前年の所得です。新宿区などの案内では、前年の総所得金額等から基礎控除43万円だけを差し引いた額に料率を掛け、配偶者控除や社会保険料控除などは差し引かないと説明されています。そのため、退職した年の国保料は在職中の高い所得を元に計算され、収入が途絶えていても高くなりがちです。一方で翌年度(4月分から)は退職した年の所得で計算し直されるため、無職の期間が長ければ大きく下がります。

もう1つの違いが家族の扱いです。国保には扶養という考え方がなく、家族も1人ずつ加入者として均等割がかかります。任意継続では、条件を満たす家族は被扶養者として加入でき、家族分の保険料は追加でかかりません。配偶者や子どもを扶養している人は、この差だけで年に数万円以上開くことがあります。

会社都合で辞めた人は国保の軽減を先に確認する

倒産・解雇などで離職した特定受給資格者や、雇い止めなどの特定理由離職者は、国保の保険料の計算で前年の給与所得を100分の30とみなす軽減を受けられます。厚生労働省の案内によると、対象期間は離職日の翌日の属する月から翌年度末までです。対象かどうかは雇用保険の離職理由で決まるため、ハローワークで受け取った書類を持って市区町村の窓口で申告します。

効果は大きく、たとえば2025年の給与収入が400万円の人は給与所得が276万円ですが、軽減後は82.8万円として扱われます。基礎控除43万円を引いた所得割の元は、233万円から39.8万円へと約6分の1になります。この軽減を受けられる人は、任意継続より国保が安くなることが多いので、任意継続の申出期限(20日以内)の前に国保の試算を取っておくと比べやすくなります。失業手当の金額は失業保険の計算機で確認できます。

比べる手順と、2年目に切り替えるという選択肢

比べる手順は次の3つです。

1. 任意継続の保険料を出す:給与明細の健康保険料(介護・支援金を含む本人負担分)を2倍するか、退職時の標準報酬月額(上限32万円)に料率を掛けます。
2. 国保の保険料を試算する:市区町村の国保の窓口やホームページで、前年の源泉徴収票の金額と世帯の人数を伝えて試算してもらいます。会社都合の退職なら軽減後の金額も確認します。
3. 家族の扶養に入れないか確認する:協会けんぽの場合、同居家族の扶養に入る条件は年間収入130万円未満(60歳以上などは180万円未満)かつ被保険者の収入の2分の1未満が基本です。入れれば保険料はかかりません。

任意継続の保険料は、料率や上限の改定を除けば2年間ほぼ変わりません。これに対して国保は、退職翌年度に所得が下がれば安くなります。協会けんぽでは任意継続を本人の申出でやめることができ、申出が受理された月の翌月1日に資格を失います。1年目は任意継続、2年目は国保の試算が下がった時点で国保に移る、という組み合わせも選べます。国保に入るときは、資格を失った日から14日以内に市区町村へ届け出るのが原則です。

退職月によって社会保険料や住民税の負担も変わります。辞める前にいくら手元に残るかは退職シミュレータ「辞めたらどうなる」で、貯金が何か月もつかと合わせて、退職後の手続き全体は退職した年の税金・保険料でやりがちな失敗5つで確認できます。

この記事は2026年度(令和8年度)の協会けんぽの料率と制度をもとにした一般的な解説です。健康保険組合の任意継続は保険料の上限や料率が組合ごとに異なり、国保の保険料も市区町村ごとに異なるため、実際の金額は加入先の窓口で確認してください。

出典: 全国健康保険協会 任意継続、全国健康保険協会 令和8年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について、全国健康保険協会 任意継続の加入条件について、全国健康保険協会 任意継続被保険者の資格喪失、全国健康保険協会 令和8年度都道府県単位保険料率、全国健康保険協会 被扶養者とは?、厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について、新宿区 保険料所得割額算定方法について、大阪市 就職・退職に伴う国民健康保険の手続き