火災保険とセットで地震保険に入っている人は、年末調整の保険料控除申告書で「地震保険料控除」の欄を埋めることになります。生命保険料控除と違って計算はシンプルですが、所得税と住民税で控除額が違うことや、古い契約にだけ残る「旧長期損害保険料」の扱いなど、迷いやすい点がいくつかあります。戻る金額は控除額 × その人の税率でおおよそ見積もれるので、まず控除額の出し方から順に見ていきます。

所得税は保険料の全額(上限5万円)、住民税は半額(上限2万5千円)

所得税の地震保険料控除は、その年に支払った地震保険料がそのまま控除額になります。年3万円払っていれば控除額も3万円です。ただし上限があり、5万円を超えて払っても控除額は5万円で止まります。生命保険料控除のように保険料の金額によって「×1/2」「×1/4」と段階的に縮む計算はありません。

翌年度の住民税にも同じ名前の控除がありますが、こちらは支払った地震保険料の2分の1が控除額で、上限は2万5千円です。たとえば年3万円の地震保険料なら、住民税の控除額は1万5千円になります。住民税の控除は会社が年末調整で計算するものではなく、年末調整の結果が源泉徴収票を通じて市区町村に伝わり、翌年6月からの住民税の計算に反映されるしくみです。

控除の対象になるのは、自分や生計を一にする親族が持っている、ふだん住んでいる家屋や、家具・衣類など生活に通常必要な家財を対象にした契約で、地震・噴火・津波による損害を補償する部分の保険料です。火災保険と一緒に契約していても、控除の対象は地震保険の部分の保険料だけで、火災保険料そのものは対象になりません。店舗や事務所を兼ねた住宅は、居住に使っている部分の割合に対応する保険料だけが対象です。国税庁のタックスアンサーでは、床面積で按分する方法と、家屋のおおむね90%以上を居住に使っていれば全額を対象にしてよい取り扱いが示されています。

古い契約の「旧長期損害保険料」は計算式が別になる

地震保険料控除は、平成18年までの「損害保険料控除」を改組してできた制度です。その経過措置として、一定の古い長期契約の保険料は「旧長期損害保険料」として控除が続いています。対象は、平成18年12月31日までに結んだ契約で、満期返戻金などがあって保険期間が10年以上のもの、かつ平成19年1月1日以後に契約内容を変更していないものです。控除証明書に区分が書かれているので、自分の契約がどちらに当たるかはそこで確認できます。

所得税での旧長期損害保険料の控除額は、年間の保険料が1万円以下なら全額、1万円超2万円以下は「保険料×1/2+5,000円」、2万円を超えると一律1万5千円です。住民税では、5,000円以下は全額、5,000円超1万5千円以下は「保険料×1/2+2,500円」、1万5千円を超えると一律1万円になります。

地震保険料と旧長期損害保険料が別々の契約にある場合は、それぞれの計算結果を合計できます。ただし合計の上限は所得税で5万円、住民税で2万5千円です。たとえば地震保険料が年4万円、別契約の旧長期損害保険料が年2万5千円なら、所得税は4万円+1万5千円=5万5千円となり、上限の5万円が控除額になります。一方、1つの契約で両方に当てはまる保険料を払っている場合は、どちらか一方を選んで計算します。国税庁の質疑応答事例では、旧長期損害保険料1万7千円・地震保険料1万円の契約について、旧長期の計算(1万3,500円)を選べるとしています。有利なほうを選べるので、両方の計算をしてみて控除額の大きいほうを書けば足ります。

戻る金額の目安は「控除額×税率」で数千円程度

所得控除は税額から直接引かれるものではなく、税率を掛ける前の所得を減らすものです。所得税の税率は課税所得に応じて5%〜45%の7段階で、課税所得195万円未満なら5%、195万円以上330万円未満なら10%、330万円以上695万円未満なら20%です。会社員の多くはこの3つのどれかに当てはまります。

地震保険料を年3万円払っている、所得税率10%の人で計算してみます。所得税の控除額は3万円なので、所得税は3,000円(復興特別所得税を含めると約3,063円)軽くなります。住民税は控除額1万5千円に所得割の税率10%を掛けて1,500円です。合わせて年4,500円ほどの差が出る計算です。同じ保険料でも所得税率20%の人なら、所得税の軽減は約6,126円になります。

上限まで使った場合でも、所得税率10%の人で所得税が5,000円(復興特別所得税込みで約5,105円)、住民税が2,500円です。金額は大きくありませんが、地震保険は毎年払い続ける保険料なので、申告を忘れると毎年この分を余計に払うことになります。なお、年末調整で12月の給与などに上乗せして戻ってくるのは所得税の分だけで、住民税の分は翌年6月以降の天引き額が少なくなる形で効いてきます。

保険料控除申告書の書き方と控除証明書

記入には、秋ごろに保険会社から届く地震保険料控除証明書を使います。火災保険と地震保険をまとめて契約している場合は、1枚の証明書に地震保険料の金額が書かれていることが多いので、火災保険を含む合計額と取り違えないように注意します。申告書の地震保険料控除の欄には、保険会社の名称、保険の種類、保険期間、契約者と保険の対象の所有者の氏名、続柄などを証明書から書き写し、「地震・旧長期」の区分に丸を付けて、その年に支払った保険料の金額を記入します。

そのうえで、地震保険料の合計額と旧長期損害保険料の合計額をそれぞれ出し、旧長期の分は上の計算式に当てはめて、2つを足した金額(上限5万円)を控除額の欄に書きます。旧長期の計算で1円未満の端数が出たときは切り上げです。年末調整を電子化している会社なら、控除証明書のデータを読み込めば計算は自動で行われます。

控除証明書は申告書と一緒に勤務先へ提出します。生命保険料控除の旧契約には少額なら添付を省ける扱いがありますが、地震保険料控除は金額にかかわらず添付が必要です。証明書をなくしたときは保険会社に再発行を頼めます。年末調整に間に合わなかった場合や、提出を忘れた場合でも、確定申告をすれば控除を受けられます。

同じ申告書で記入する生命保険料控除の計算は年末調整の生命保険料控除はいくら戻る?、書類全体の流れは年末調整の書き方がわからない人へで解説しています。年収や控除の状況を入れて還付額を試算したい場合は年末調整の還付金シミュレーションが使えます。

控除額の計算式や経過措置の扱いは税制改正で変わることがあります。ご自身の年末調整の扱いは、勤務先の担当部署または税務署にご確認ください。

出典: 国税庁 No.1145 地震保険料控除、国税庁 No.1146 地震保険料控除の対象となる保険や共済の契約、国税庁 質疑応答事例 地震保険料控除に関する経過措置、国税庁 A2-3 給与所得者の保険料控除の申告、国税庁 No.2260 所得税の税率、川崎市 所得控除(住民税)