源泉徴収票の「支払金額」と「給与所得控除後の金額」の差が、給与所得控除です。会社員やパート・アルバイトは、仕事のためにかかった費用を一つずつ証明しなくても、年収に応じた一定額が自動で差し引かれます。2026年分(令和8年分)は、この控除の最低額が65万円から74万円に引き上げられました。この記事では、2026年分の計算式、年収別の早見表、変わった人と変わらない人、年末調整や住民税との関係を順に整理します。

2026年分の給与所得控除の計算式

国税庁のタックスアンサー(No.1410)に載っている令和8年分・令和9年分の給与所得控除額は、年収(源泉徴収票の支払金額)に応じて次のとおりです。

給与等の収入金額給与所得控除額(2026年分)
220万円まで74万円
220万円超360万円まで収入金額×30%+8万円
360万円超660万円まで収入金額×20%+44万円
660万円超850万円まで収入金額×10%+110万円
850万円超195万円(上限)

年収から給与所得控除を引いた残りが給与所得で、所得税や住民税、扶養に入れるかどうかの判定はこの給与所得をもとにします。なお年収660万円未満の人は、実際には所得税法の別表第五という表で給与所得を求めます。この表は年収を4,000円単位などで区切っているため、上の式で出した額と数千円ずれることがあります。早見表で目安をつかむ分には、式の計算で十分です。

2つの会社から給与をもらっている人は、源泉徴収票の支払金額を合計してから表に当てはめます。会社ごとに74万円ずつ引けるわけではない点に気をつけてください。掛け持ちの税金についてはアルバイト掛け持ちの税金の記事で整理しています。

年収別の早見表(2026年分と2025年分)

上の式に年収を当てはめると、控除額と給与所得は次のようになります。2025年分(令和7年分)の控除額も並べました。

年収2025年分の控除額2026年分の控除額2026年分の給与所得
100万円65万円74万円26万円
150万円65万円74万円76万円
190万円65万円74万円116万円
200万円68万円74万円126万円
220万円74万円74万円146万円
300万円98万円98万円202万円
400万円124万円124万円276万円
500万円144万円144万円356万円
600万円164万円164万円436万円
700万円180万円180万円520万円
800万円190万円190万円610万円
1,000万円195万円195万円805万円

控除額は年収が上がるほど増えますが、年収に対する割合は下がっていきます。年収100万円なら年収の7割超が控除されるのに対し、年収1,000万円では2割弱です。年収850万円を超えると控除は195万円で頭打ちになります。

手取りまで知りたい場合は、給与所得から社会保険料控除や基礎控除などを引いて税額を出し、さらに社会保険料を差し引く必要があります。年収を入れるだけで一通り計算できる手取り計算機や、年収ごとの内訳を並べた年収別の手取り一覧も使えます。

引き上げで変わる人・変わらない人

早見表を見比べるとわかるとおり、2026年分の改正で控除が増えるのは年収220万円未満の人だけです。年収190万円以下の人は65万円から74万円へ9万円、190万円を超えて220万円未満の人は差が縮まり、たとえば年収200万円なら6万円増えます。年収220万円以上は計算式が2025年分と同じなので、控除額は変わりません。

控除が9万円増えたときの税額の差は、所得税の税率が5%の人なら約4,600円(復興特別所得税を含む)です。住民税も同じ引き上げが2026年の所得にかかる令和9年度分から適用されるので、住民税の所得割(10%)でさらに最大9,000円ほど軽くなります。パートやアルバイトで働く人ほど影響が大きい改正といえます。

財務省の「令和8年度税制改正の大綱の概要」によると、最低保障額の本則は65万円から69万円への引き上げで、令和8年分と令和9年分はさらに5万円を上乗せして74万円になっています。上乗せは2年間の時限措置なので、2028年分以降の金額はあらためて確認が必要です。

あわせて、2026年分は所得税の基礎控除も合計所得489万円以下なら104万円に引き上げられました。給与所得控除74万円と基礎控除104万円を足した178万円が、給与だけの人に所得税がかからない年収の目安です。いわゆる年収の壁の全体像は2026年の年収の壁の記事や年収の壁の計算機で確認できます。

年末調整・住民税との関係

2026年分の引き上げを定めた規定は2026年12月1日に施行されます(国税庁 No.1410の注記)。そのため1〜11月の給与から引かれた源泉所得税は改正前の前提で計算されていて、年末調整で1年分の税額を改正後の控除額で計算し直します。年収220万円未満の人は、この差額が年末調整の還付として戻る形になります。いくら戻るかの目安は年末調整の還付金計算機で試算できます。

年末調整のあとに受け取る源泉徴収票では、「給与所得控除後の金額」の欄に2026年分の控除を引いた後の数字が入ります。見方は源泉徴収票の見方の記事で解説しています。

住民税は前年の所得をもとに翌年度に課税される仕組みです。東京都中央区の案内では、給与所得控除の最低額を74万円とする扱いは、2026年1〜12月の所得をもとにした令和9年度(2027年度)の住民税から適用されるとしています。2026年6月から引かれている住民税(令和8年度分)は2025年の所得が対象なので、最低額65万円で計算されています。

よくある質問

Q. 給与所得控除は自分で申請する必要がありますか?
申請は不要です。年末調整でも確定申告でも、年収を入れれば自動で差し引かれます。実際にかかった仕事の費用が給与所得控除の2分の1を超えるときは、確定申告で特定支出控除を使える場合があります。

Q. 副業の雑所得や事業所得にも給与所得控除はありますか?
ありません。給与所得控除は給与収入だけが対象です。副業の売上からは、実際にかかった経費を差し引いて所得を出します。

Q. 2025年分の確定申告をするときも74万円ですか?
いいえ。2025年分(令和7年分)は最低額65万円の表を使います。年分によって表が違うので、申告する年分を確かめてから計算してください。

この記事は2026年10月時点の国税庁・財務省・自治体の公表資料をもとにした一般的な解説です。個別の税額は勤務先や税務署、お住まいの市区町村にご確認ください。

出典: 国税庁 No.1410 給与所得控除、国税庁 No.1199 基礎控除、財務省 令和8年度税制改正の大綱の概要、東京都中央区 令和9年度から適用される個人住民税の主な改正