退職後の国民年金は免除できる?失業による特例免除の条件と申請方法【2026年度】
会社を辞めて次の勤務先が決まっていない間は、厚生年金から外れて国民年金の第1号被保険者になります。保険料は月17,920円(令和8年度)で、1年分なら215,040円です。在職中の前年の所得が多いと、通常の免除は所得基準を超えてしまいますが、退職・失業した人には本人の所得を除いて審査する特例があります。この記事では、その特例免除の条件・対象期間・申請方法と、免除を受けた場合と未納のままの場合で将来の年金がどう違うかを整理します。
失業による特例免除とは: 退職した人の前年所得を0円とみなす
国民年金の保険料免除は、ふつうは本人・配偶者・世帯主の前年所得で判定します。会社員として1年働いた翌年は前年所得がそれなりにあるため、通常の基準では対象外になりがちです。日本年金機構の案内では、失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できるときは、失業等をした人の前年所得にかかわらず免除や納付猶予を受けられるとしています。実務上は、退職した人の所得を0円とみなして審査する、という扱いです。
注意したいのは、除外されるのは「退職した人の所得」だけという点です。審査の対象になる配偶者や世帯主に所得があれば、その人の所得は通常どおり審査されます。たとえば実家に戻って親が世帯主になり、その親に一定以上の所得があると、全額免除にならず一部免除になったり、承認されなかったりします。配偶者や世帯主も同時に退職している場合は、その人の分も特例の対象にできます。
通常の基準のうち全額免除と納付猶予の目安は「(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円」以下の前年所得で、単身なら67万円です。一部免除は次の表のように段階があります。
| 種類 | 前年所得の基準 | 月の保険料(令和8年度) |
|---|---|---|
| 全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 | 0円 |
| 4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 4,480円 |
| 半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 8,960円 |
| 4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 13,440円 |
| 納付猶予(50歳未満) | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(本人・配偶者のみ) | 0円(後で追納しないと年金額に反映されない) |
対象になる期間: 失業した月の前月から翌々年の6月まで
特例が使えるのは、失業日(退職日の翌日)が属する月の前月から翌々年の6月までの保険料です(板橋区の案内による)。たとえば2026年10月31日に退職した場合、失業日は11月1日なので、2026年10月分から2028年6月分までが対象になります。
ただし、免除の審査は7月から翌年6月までの「年度」ごとに行われます。全額免除や納付猶予を承認された人は翌年度も続けて審査してもらえる仕組みがありますが、失業による特例免除で承認された人は翌年度も改めて申請が必要です。上の例なら、2026年10月〜2027年6月分の申請に加えて、2027年7月以降に2027年7月〜2028年6月分の申請をもう一度出します。
申請は過去の分にもさかのぼれて、申請時点から2年1か月前までの期間が対象です。退職から時間がたって未納の通知が届いてからでも、この範囲内なら免除を申請できます。
申請方法と必要な書類
申請先は住んでいる市区町村の国民年金の窓口か年金事務所で、郵送や電子申請でも出せます。用意するものは次の3つです。
- 国民年金保険料免除・納付猶予申請書: 日本年金機構のサイトからダウンロードできます。
- 基礎年金番号かマイナンバーを確認できる書類: 基礎年金番号通知書、またはマイナンバーカードなど。
- 失業の事実を確認できる書類のコピー: 雇用保険の被保険者だった人は、会社から届く「雇用保険被保険者離職票」や、ハローワークで交付される「雇用保険受給資格者証」「雇用保険受給資格通知」など。
離職票は退職後しばらくしてから届くため、まず国民年金への切り替え手続き(退職日の翌日から14日以内)を済ませ、離職票が届いた時点で免除を申請する、という順番でも間に合います。雇用保険に入っていなかった人や自営業をやめた人は、廃業の届出の控えなど別の書類で確認する場合があるので、窓口で確かめてください。結果は審査のあと郵送で届き、板橋区の案内では約2か月後とされています。
失業保険(基本手当)を受け取っていても、特例免除は申請できます。ハローワークで交付される受給資格者証は、そのまま失業の事実を確認する書類として使えます。受け取れる金額の目安は失業保険はいくら?計算方法や失業保険の受給額計算機で確認できます。
免除・納付猶予・未納で将来の年金はどう違うか
免除を受けた期間は、何もしないで未納にした期間とは扱いが大きく違います。日本年金機構の資料をもとに、1年間(12か月)国民年金を払えなかった場合の違いをまとめると次のとおりです。
| 1年間の扱い | 老齢基礎年金への反映 | 年金額への影響(年額の目安) | 障害・遺族基礎年金の納付要件 |
|---|---|---|---|
| 全額納付(215,040円) | 満額分 | 約21,180円増える | 満たす |
| 全額免除 | 2分の1 | 約10,590円増える | 満たす |
| 納付猶予 | 反映なし(受給資格期間には入る) | 0円 | 満たす |
| 未納 | 反映なし | 0円 | 満たさない場合がある |
年額の目安は、40年納付で受け取る老齢基礎年金(令和8年度の847,300円)を40で割って計算した概算です。全額免除なら保険料を1円も払わなくても、払った場合の半分が年金額に入ります。これは年金の半分が税金でまかなわれているためです。未納のまま病気やけがで障害が残ると、障害基礎年金の納付要件を満たさず受け取れないことがあります。日本年金機構は、事故や病気が起きてからさかのぼって申請しても、障害基礎年金の納付要件には算入されないと案内しています。
免除や納付猶予を受けた保険料は、10年以内なら後から納める(追納)ことができ、追納すると年金額を満額に近づけられます。承認された年度の翌年度から数えて3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額が上乗せされます。追納した保険料は社会保険料控除の対象になるので、再就職して収入が戻った年に追納すると、その年の所得税・住民税も軽くなります。社会保険料控除の効果は年末調整の還付金シミュレーターで目安を確かめられます。
あわせて確認したい: 健康保険の軽減と手続きの順番
退職後は年金だけでなく健康保険の切り替えも必要です。国民健康保険にも、倒産・解雇などで離職した人(雇用保険の特定受給資格者・特定理由離職者)を対象に、前年の給与所得を100分の30とみなして保険料を計算する軽減があります(杉並区などの案内による)。自己都合の退職では、正当な理由があると認められた特定理由離職者を除いて対象外です。任意継続とどちらが安いかは任意継続と国民健康保険の比較、退職した年の税金と保険料全体の流れは退職した年の税金・保険料でやりがちな失敗にまとめています。
手続きの順番は、①退職後14日以内に市区町村で国民年金と国民健康保険(または任意継続)の手続き、②離職票が届いたらハローワークで失業保険の手続き、③離職票か受給資格者証のコピーを添えて国民年金の特例免除を申請、という流れにすると、書類をそろえやすくなります。配偶者が会社員でその扶養(第3号被保険者)に入れる場合は、国民年金の保険料自体がかからないので、免除の申請はいりません。
この記事は2026年10月時点の日本年金機構・自治体の公表資料をもとにした一般的な解説です。承認されるかどうかは世帯の状況によって変わるため、実際の手続きはお住まいの市区町村の国民年金窓口か年金事務所で確認してください。
出典: 日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度、日本年金機構 国民年金保険料の追納制度、日本年金機構 国民年金保険料、日本年金機構 国民年金に加入するための手続き、板橋区 国民年金保険料の免除・納付猶予(退職特例制度)、文京区 国民年金保険料の免除・納付猶予(退職(失業)等による特例)、杉並区 非自発的に失業された方の国民健康保険料の減額