静かな退職(Quiet Quitting)とは、会社は辞めずに、契約の範囲内の必要最低限の仕事だけをこなす働き方のことです。残業や飲み会を断り、昇進レースから降り、仕事に自分を捧げない。2022年ごろに海外のSNSをきっかけに広く知られるようになり、日本でも話題になりました。

悪いことではない

まず前提として、契約どおりに働くのは労働者として何も間違っていません。給与に見合う仕事をし、プライベートを守る。過重労働で心身を壊すより、はるかに合理的な自衛です。「やる気がない」と非難される筋合いのものではなく、実際には家庭や副業、学び直しに軸足を移した戦略的な選択であることも多いです。

リスクは「ゆでガエル」化

一方で、静かな退職には静かなコストもあります。スキルと市場価値が更新されないまま年齢だけが上がると、いざ環境が変わったとき(会社の業績悪化・リストラ・上司の交代)に動けなくなっている。省エネ運転のつもりが、選択肢を失う片道切符になっていた、というのが典型的な失敗パターンです。

「動かない」と「動けない」を見分ける

健全な静かな退職と危険なそれの違いは、いつでも動ける状態を保っているかどうかです。チェックは簡単で、①自分の手取りと市場価値を把握している、②生活費の半年分の貯金がある、③辞めた場合に何ヶ月暮らせるか知っている。この3つに即答できるなら、あなたの省エネ運転は戦略です。答えられないなら、それは選択ではなく麻痺かもしれません。

数字はすぐ出せます。手取り計算と辞めたらどうなるシミュレータで3分、あるいは退職タイプ診断で自分がどちら側か確認できます。

疲れて動けないだけなら、別の話

「最低限すらつらい」「日曜の夜に眠れない」なら、それは静かな退職ではなく消耗のサインです。会社員の健康保険には、業務外の病気やケガで働けない間に月給(標準報酬月額)の約3分の2を受け取れる傷病手当金という制度があります。頑張り続けるでも辞めるでもない、第三の選択肢があることは知っておいてください。

出典: 全国健康保険協会 傷病手当金、厚生労働省 こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト