年末にパートの年収が壁を超えそうなときに確かめること|12月の働き方と残りの枠【2026年】
年末が近づいてパートの年収が「壁」を超えそうなときは、壁ごとに数え方が違う点を最初に押さえます。税金の壁(配偶者控除・扶養控除の136万円、配偶者特別控除が満額の169万円、本人に所得税がかかり始める178万円)は、2026年1月1日から12月31日までに支払日が来た給与の合計で決まります。12月に働いた分でも、支払日が2027年1月なら2026年分には入りません。今年あといくら受け取れるかは「壁の金額−1〜11月に支払われた給与の合計」で出し、12月の支払日に受け取る額と比べます。非課税の通勤手当はこの合計に入れません。
一方、社会保険の扶養(130万円未満、19〜22歳は150万円未満)は、1〜12月の合計ではなく、これから1年間の見込み収入で判定します。2026年4月1日以降に扶養に認定される人のうち、収入が給与だけで、労働条件通知書など契約書類から年収を出せる人は、その賃金から見込む年収で判定でき、契約に定めのない残業代は含めません(それより前に認定された人や、シフト制だけの記載などで年収を出せない人は、これまでどおりの見込みで判定します)。こちらは通勤手当も含めて数えます。勤め先で社会保険に入るかどうか(従業員51人以上の会社)は、2026年10月から年収に関係なく、週20時間以上の契約かどうかで決まります。
12月に確かめる壁と、それぞれの数え方(2026年分)
年末に気にする壁を、何で数えるかとあわせて並べると次のとおりです。金額は2026年分の所得税・令和9年度分(2026年の所得にかかる分)の住民税・2026年11月時点の社会保険の基準です。
| 壁 | 金額 | 何で数えるか | 超えるとどうなるか |
|---|---|---|---|
| 本人の住民税 | 119万円以下なら非課税(単身・東京23区などの1級地) | 1〜12月に支払われた給与 | 2027年度の住民税が少しかかる |
| 配偶者・親の社会保険の扶養 | 130万円未満(19〜22歳は150万円未満、60歳以上は180万円未満) | これから1年間の見込み | 国民健康保険・国民年金などを自分で払う |
| 配偶者控除・扶養控除 | 136万円以下 | 1〜12月に支払われた給与 | 配偶者は配偶者特別控除38万円に切り替わる。16〜18歳と23歳以上の子は親の扶養控除38万円がなくなる |
| 19〜22歳の子の特定親族特別控除(63万円) | 159万円以下 | 1〜12月に支払われた給与 | 親の控除が段階的に減り、197万円を超えるとゼロ |
| 配偶者特別控除の満額(38万円) | 169万円以下 | 1〜12月に支払われた給与 | 配偶者の税金の控除が段階的に減り、207万円を超えるとゼロ |
| 本人の所得税 | 178万円以下なら0円 | 1〜12月に支払われた給与 | 超えた分に所得税がかかる |
| 勤め先の社会保険(従業員51人以上の会社) | 週20時間以上(2か月を超える雇用見込み・学生でない) | 契約上の週の労働時間 | 勤め先の健康保険・厚生年金に入る |
控除の金額は、扶養する側(配偶者や親)の合計所得が900万円以下の場合です。年収の壁の全体像は2026年の年収の壁のまとめ、配偶者の控除が収入ごとにどう減るかは配偶者控除・配偶者特別控除の記事で整理しています。この記事では、12月に「あといくら働けるか」を考えるときの数え方に絞ります。
税金の年収は「その年に支払われた給与」で数える
国税庁のタックスアンサー(No.2509)は、給与の収入になる時期を、契約などで支給日が決まっていればその支給日としています。何月に働いたかではなく、いつ支払われたかで、どの年の収入になるかが決まるということです。国税庁の質疑応答(No.2668の関連Q&A)でも、12月分の給与が翌年1月10日に支払われる場合、その給与はその年の年末調整の対象にならないと示されています。
たとえば「月末締め・翌月25日払い」の職場なら、2026年分の年収は、2025年12月に働いて2026年1月25日に受け取った分から、2026年11月に働いて12月25日に受け取る分までの12回分です。この場合、12月に入った時点で今年の年収はほとんど決まっていて、12月にシフトを増やしてもその給与は2027年分に数えられます。反対に「15日締め・当月25日払い」なら、12月1日〜15日に働いた分は今年の収入です。まず給与明細や雇用契約書で、自分の締め日と支払日を確かめておくと計算を間違えにくくなります。
非課税の範囲の交通費(通勤手当)は、税金の年収に入れません。電車・バス通勤の通勤手当は月15万円まで所得税がかからず(国税庁 No.2582)、国税庁 No.1190では、非課税の所得は配偶者控除を受けられるかを判定する合計所得金額から除くとしています。税金の年収は、源泉徴収票の「支払金額」に当たる額です。
残りの枠は「壁の金額−1〜11月に支払われた給与」で出す
12月にあといくら受け取れるかは、残りの枠=壁の金額−2026年1〜11月に支払われた給与の合計(非課税の通勤手当を除く)で出せます。1〜11月の合計は、毎月の給与明細の支給額から通勤手当を引いて足せば分かります。出した枠と、12月の支払日に受け取る見込みの額を比べます。
配偶者(会社員)の扶養に入っている人で、1〜11月に支払われた給与が合計112万円だった場合の残りの枠は次のとおりです。
| 確かめる壁 | 上限 | 残りの枠 |
|---|---|---|
| 本人の住民税が非課税 | 119万円 | 7万円 |
| 配偶者控除 | 136万円 | 24万円 |
| 配偶者特別控除が満額 | 169万円 | 57万円 |
| 本人の所得税が0円 | 178万円 | 66万円 |
12月25日に11月分として11万円を受け取ると、2026年分の年収は123万円です。配偶者控除の136万円まではまだ13万円の余裕があります。住民税の119万円は超えますが、サイトの計算では本人の2027年度の住民税は年7,800円ほど(森林環境税1,000円を含む)です(週20時間で雇用保険に加入、東京23区などの1級地の場合)。税金の壁は少し超えても負担が少しずつ増えるしくみなので、手取りが大きく逆転することはありません。
社会保険の扶養は「これから1年の見込み」で判定する
日本年金機構の案内では、扶養の基準の年間収入は過去の収入ではなく、扶養に入る時点から先の1年間に見込まれる収入のことだとされています。さらに、給与収入だけの人は、扶養に認定される日が2026年4月1日以降なら、労働条件通知書などに書かれた賃金から見込む年収で判定できるようになりました。厚生労働省のQ&Aでは、契約に明確な定めがなく契約の段階では見込めない残業代などは、この年間収入に含めないとしています。残業代などで結果的に1年の収入が130万円以上になっても、それが社会通念上妥当な範囲にとどまるなら、それを理由に扶養の認定を取り消す必要はないとも示されています(具体的な金額の線は示されていません)。
ここで差が出るのが交通費です。日本年金機構の案内では、契約書類の賃金には諸手当も含まれ、「通勤手当有」とだけ書かれて金額が分からない書類ではこの方法で判定できない例に挙げられています。つまり社会保険の扶養では通勤手当も年間収入に入れて数えます。たとえば時給1,150円・週20時間の契約(1年を52週として計算)なら賃金は年119.6万円、通勤手当が月8,000円なら年9.6万円で、扶養の判定に使う見込みは129.2万円です。税金の年収は通勤手当を除いた119.6万円なので、同じ人でも2つの年収がずれます。
注意したいのは契約そのものが変わるときです。同じ時給で週22時間の契約に変えると見込みは141.2万円(通勤手当込み)となり、130万円以上なので扶養から外れます。厚生労働省のQ&Aでは、契約の更新や労働条件の変更があればそのたびに書類を出し直すことになっています。また、契約書類で判定できない人(「シフト制による」としか書かれていない、契約期間が1年に満たないなど)は、これまでどおり給与明細や課税証明書などで見込みが判断されます。その場合でも、人手不足による労働時間の延長などで一時的に130万円以上になったときは、事業主の証明を付ければ原則として連続2回まで扶養にとどまれる、と厚生労働省は案内しています。
19〜22歳の子(配偶者を除く)の基準は150万円未満で、年齢は扶養に認定される日が属する年の12月31日時点で判定します。親の税金の側では、19〜22歳の子は136万円を超えても年収159万円まで特定親族特別控除で63万円が続きます(詳しくは特定親族特別控除の記事)。
勤め先の社会保険は週20時間の契約で決まる
従業員51人以上の会社で働く人は、2026年10月1日に月額8.8万円の賃金要件がなくなり、週の所定労働時間が20時間以上で、2か月を超えて雇われる見込みがあり、学生でなければ勤め先の社会保険に入ります。12月にいくら稼いだかは関係なく、契約上の労働時間で決まる点が税金の壁と違います。
ただし、契約は週20時間未満でも、日本年金機構のQ&Aでは、実際の労働時間が2か月続けて週20時間以上になり、その状態が続いている、または続く見込みのときは、3か月目の初日から加入するとしています。年末年始の繁忙期に12月と1月の2か月続けて長く入り、その後も同じ働き方が続く見込みなら、加入の対象になり得ます。
数字で見る:どの壁を超えると手取りが大きく変わるか
配偶者(会社員・年収500万円)の扶養に入っている40歳のパートが、従業員50人以下の会社で週20時間働く場合(雇用保険に加入)を、サイトの年収の壁シミュレーターと同じ計算で比べます。ここでの年収は通勤手当を除いた額で、社会保険の扶養も同じ年収の見込みで判定されたと仮定し、国民健康保険料はサイトの目安の料率(所得割11%・均等割7万円)で計算しています。
| 本人の年収 | 本人の手取り | 配偶者の税金の増加 | 世帯で見た手取り |
|---|---|---|---|
| 129万円(扶養内) | 1,269,750円 | 0円 | 1,269,750円 |
| 130万円(扶養から外れる) | 989,160円 | 0円 | 989,160円 |
| 163万円(扶養外) | 1,272,110円 | 0円 | 1,272,110円 |
| 170万円(扶養外) | 1,327,860円 | 1,000円 | 1,326,860円 |
扶養から外れて国民健康保険と国民年金を自分で払うと、年収129万円のときより手取りが約28万円少なくなり、世帯の手取りが129万円のときを上回るのは年収163万円からです。これに対して税金の壁は、136万円を超えても配偶者特別控除で38万円が続くので、配偶者の税金は169万円まで増えません。170万円で年1,000円、178万円で年5,500円の増加です。
例外は16〜18歳と23歳以上の子です。この年齢の子が1〜12月に支払われた給与で136万円を超えると、親の扶養控除38万円がなくなり、サイトの計算では親(年収500万円)の所得税と住民税が合わせて年52,400円増えます。この場合は、12月の支払日に受け取る額で136万円を超えないかを確かめる意味が大きくなります。
よくある質問
Q. 12月に働いた分の給料が1月に支払われる場合、今年の年収に入りますか?
入りません。税金の年収は支給日で数えるので、支給日が2027年1月なら2027年分の収入になり、2026年分の年末調整や源泉徴収票にも含まれません。
Q. 年末の残業で1年の合計が130万円を少し超えたら、社会保険の扶養から外れますか?
1〜12月の合計だけで外れるわけではありません。2026年4月以降に契約内容で認定された人は、契約に定めのない残業代は見込みに含めず、社会通念上妥当な範囲なら認定を取り消す必要はないとされています。それ以外の人も、人手不足による労働時間の延長などで一時的に増えたのなら、事業主の証明で原則連続2回まで扶養にとどまれます。扱いは配偶者や親の勤め先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に確認してください。
Q. 交通費(通勤手当)は年収に入りますか?
税金の壁では、非課税の範囲(電車・バス通勤なら月15万円まで)の通勤手当は入りません。社会保険の扶養の130万円では、通勤手当も含めて年間収入を見込みます。
この記事は2026年11月時点の国税庁・厚生労働省・日本年金機構・自治体の公表資料をもとにした一般的な解説です。金額の例はサイトの計算式による概算で、国民健康保険料は自治体によって異なります。社会保険の扶養の判定は、扶養に入っている先の健康保険の保険者が行うため、個別の扱いは保険者や勤務先にご確認ください。
出典: 国税庁 No.2509(給与所得の収入の時期)、国税庁 No.2668 年末調整の対象となる給与、国税庁 No.1410 給与所得控除、国税庁 No.1190 配偶者の所得がいくらまでなら配偶者控除が受けられるか、国税庁 No.1195 配偶者特別控除、国税庁 No.1180 扶養控除、国税庁 No.1177 特定親族特別控除、国税庁 No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当、東京都中央区 令和9年度から適用される個人住民税の主な改正、日本年金機構 従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き、日本年金機構 労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて、厚生労働省 労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定に関するQ&A、厚生労働省 「年収の壁」への対応、日本年金機構 19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります、日本年金機構 2026年10月1日から短時間労働者に係る賃金要件の撤廃と最低賃金の減額特例の対象者に関する制度が始まります、日本年金機構 よくある質問(所定労働時間は週20時間未満で、実際の労働時間が恒常的に週20時間以上となった場合)