年末調整の書類を提出したあと、「還付金はいつ戻ってくるのか」「どこに振り込まれるのか」が気になる人は多いはずです。年末調整の還付は税務署から直接振り込まれるのではなく、勤務先が給与と一緒に精算するしくみになっています。

還付金は原則「12月の給与」で戻ってくる

年末調整は、1年間の給与にかかる正しい所得税額を計算し、毎月の給与やボーナスから源泉徴収された税額との差額を精算する手続きです。国税庁の説明では、この精算は本年最後に支払う給与で行うとされており、多くの会社では12月に支払われる給与(またはその月の賞与)の明細に「年調還付」などの名目で上乗せされます。給与明細の所得税欄がマイナス表示になっていたり、還付額が別の行に記載されていたりするのはこのためです。勤務先の事務処理の日程によっては、翌年1月の給与と合わせて精算されることもあるため、正確な時期は勤務先の給与担当で確認できます。

還付しきれないときは翌月以降に持ち越される

還付金の原資は、勤務先がその月に税務署へ納めるはずだった従業員全体の源泉徴収税額です。年末調整を行った月の徴収税額だけでは還付しきれない場合、その後に納付する源泉徴収税額から順次還付されます。さらに、還付することになった日の翌月から2か月を経過しても還付しきれないと見込まれる場合は、勤務先が「年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を税務署に提出し、税務署から還付を受けたうえで従業員に支払う流れになります。従業員数の少ない会社や還付額が大きい年は、受け取りが12月より遅れることがあるのはこのためです。

年の途中で退職した人は確定申告で取り戻す

年末調整の対象は、原則として1年を通じて勤務している人や、年の途中で就職して年末まで勤務している人です。年の途中で退職し、その年のうちに再就職しなかった人は年末調整を受けられません。この場合、納めすぎの所得税は翌年になってから確定申告(還付申告)をすれば還付されます。還付申告は確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。退職した年の税金の扱いは退職した年の税金・保険料でやりがちな失敗5つでも解説しています。

2026年分は年末調整で戻る額が増えやすい

令和8年分(2026年分)は税制改正で基礎控除が引き上げられ、合計所得金額489万円以下なら最大104万円が控除されます。ただし、本則を上回る特例部分は毎月の源泉徴収税額表には反映されておらず、年末調整でまとめて精算されます。そのため、例年より年末調整での還付額が大きくなる人がいます。自分の年収でどのくらい戻るかの目安は年末調整の還付金シミュレーションや年収500万円の年末調整の目安で確認できます。書類の記入で迷っている場合は年末調整の書き方もあわせてご覧ください。

還付金の計算方法|6つの手順と月給30万円の例

年末調整の還付金は、「1年間に給与から天引きされた所得税の合計」−「1年分の正しい税額(年調年税額)」で決まります。国税庁のタックスアンサー(No.2662)が示す年調年税額の求め方を、順番に並べると次のとおりです。

  1. 1年間の給与・賞与の合計から、給与所得控除後の金額(給与所得)を求める
  2. 給与所得から、社会保険料控除・基礎控除・扶養控除・生命保険料控除などの所得控除を引く
  3. 残った課税所得(1,000円未満切捨て)に所得税の税率を当てはめる
  4. 住宅ローン控除を受ける人は、その額を税額から引く
  5. その税額に102.1%(復興特別所得税の分)を掛け、100円未満を切り捨てる。これが年調年税額
  6. 天引きされた所得税の合計から年調年税額を引く。プラスなら還付、マイナスなら追加で徴収

東京都の協会けんぽに加入する月給30万円・賞与なし・独身・40歳未満の会社員の2026年分を、サイトの計算機と同じ条件で計算すると次のようになります。毎月の源泉徴収税額は電算機計算の特例で求めた値です。

項目金額
給与の合計(30万円×12か月)3,600,000円
給与所得控除(360万円×30%+8万円)1,160,000円
給与所得2,440,000円
社会保険料控除(月44,070円×12か月)528,840円
基礎控除(合計所得489万円以下)1,040,000円
課税所得(1,000円未満切捨て)871,000円
所得税(税率5%)43,550円
年調年税額(×102.1%、100円未満切捨て)44,400円
1年間に天引きされた所得税(月6,340円×12か月)76,080円
還付金(76,080円−44,400円)31,680円

同じ人が生命保険料控除を4万円申告すると、課税所得が4万円減って年調年税額は42,400円になり、還付金は33,680円と2,000円増えます。所得税の税率が5%の人は、所得控除が1万円増えるごとに還付が約500円増える計算です。給与所得控除の額は年収によって計算式が変わり、基礎控除は合計所得金額によって104万円・67万円・62万円などに分かれるので、自分の年収と控除を入れて計算したい場合は年末調整の還付金シミュレーションを使うと手順1〜6をまとめて計算できます。手元に源泉徴収票があれば、「源泉徴収税額」の欄が年調年税額にあたります。見方は源泉徴収票の見方で解説しています。

2026年分はいくら戻る?年収別の目安

独身・賞与なし・ほかの控除がない会社員の場合、2026年分の年末調整で戻る所得税(復興特別所得税を含む)の目安は次のとおりです。毎月の源泉徴収は基礎控除58万円を前提にした税額表で計算されているため、引き上げ分の差が年末調整でまとめて戻ります。

年収戻る額の目安
300万円約30,220円
400万円約30,500円
500万円約53,620円
600万円約65,140円
700万円約52,320円

年収が高いほど多く戻るとは限りません。2026年分の基礎控除は、合計所得金額が489万円以下なら104万円、489万円を超え655万円以下なら67万円と段階的に変わるためです。年収700万円の人は合計所得が489万円を超えるので、600万円の人より戻る額が小さくなります。扶養や生命保険料控除、iDeCoがある場合は還付金シミュレーションで条件を入れて計算できます。

逆に12月の給与から引かれることもある

毎月の源泉徴収が1年分の税額より少なかった場合は、年末調整で不足額が出て、年末調整をする月の給与から差し引かれます。扶養控除等申告書で扶養に入れていた家族の年収が上限を超えていた場合などに起こります。不足額を引くと、その月の手取りが1月から前月までの手取りの平均の70%未満になる人は、勤務先が「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」を税務署に出して承認を受ければ、不足額を翌年1月と2月に分けて引くことができます。

還付の時期や方法は勤務先の給与計算の日程によって異なります。ご自身の年末調整の詳細は勤務先の担当部署または税務署にご確認ください。

出典: 国税庁 No.2675 年末調整の過不足額の精算、国税庁 No.2662 年末調整のしかた、国税庁 No.1199 基礎控除、国税庁 No.1410 給与所得控除、国税庁 源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求、国税庁 No.2665 年末調整の対象となる人、国税庁 No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき、国税庁 No.2030 還付申告、国税庁 給与所得者(従業員)の方へ(令和8年分)