所得金額調整控除は、給与の年収が850万円を超える会社員で、23歳未満の扶養親族がいる人、本人が特別障害者の人、特別障害者の配偶者や扶養親族がいる人の給与所得から、(年収−850万円)×10%、最大15万円を差し引く制度です。年収900万円なら5万円、年収1,000万円以上なら上限の15万円が引かれます。年末調整で受けるには、基礎控除申告書と一体になった用紙の「所得金額調整控除申告書」の欄を書いて勤務先に出します。

サイトの計算機で、40歳未満・協会けんぽ東京・16歳未満の子が1人いる会社員を令和8年分(2026年分)の税制で計算すると、この控除で減る税金は年収900万円で年1万5,200円、年収1,000万円で年4万5,700円(所得税と翌年度の住民税の合計)です。子どもが16歳未満で扶養控除が使えなくても対象になるので、書き漏らしやすい欄です。

所得金額調整控除の対象になる人

国税庁のタックスアンサー(No.1411、令和8年4月1日現在の法令等)によると、所得金額調整控除には2種類あります。年末調整で受けられるのは、子ども・特別障害者等がいる人向けのほうです。まずその年の給与の収入金額が850万円を超えていることが前提で、そのうえで次の3つのどれかに当てはまる必要があります。

要件当てはまる例
本人が特別障害者身体障害者手帳の1級・2級、精神障害者保健福祉手帳の1級の人など
23歳未満の扶養親族がいる生計を一にする子で、所得が扶養親族の範囲に収まっている人(16歳未満の子も含む)
特別障害者の同一生計配偶者か扶養親族がいる身体障害者手帳1級の親を扶養している人など

2つ目の要件で見落としやすいのは、16歳未満の子も「扶養親族」に入る点です。16歳未満の子は扶養控除の対象になりませんが、扶養親族であることに変わりはないので、所得金額調整控除の判定では数えられます。一方で、扶養親族は合計所得金額が一定以下の人に限られます。国税庁のNo.1180では、令和8年分の扶養親族の所得の上限は62万円(給与だけなら年収136万円が目安)です。アルバイト収入が多い大学生の子がいる人は、子の年収がこの範囲かどうかを先に確かめておくと迷いません。

年収850万円を超えるかどうかは、No.2676によると年末調整の対象になる1年分の給与の総額で判定します。ちょうど850万円の人は対象外で、1円でも超えた分から控除が生まれます。

控除額の計算と、年収別に減る税金

控除額の計算式は「(給与の収入金額−850万円)×10%」で、収入金額は1,000万円で頭打ちになります。このため控除額は最大15万円です。1円未満の端数は切り上げます。この控除は所得控除ではなく、給与所得そのものを小さくするしくみです。給与所得が減るので、所得税だけでなく住民税の所得割も下がります(西宮市の個人市民税の案内でも、住民税で同じ控除が適用されると説明しています)。

なぜこの制度があるのかというと、令和2年分から、年収850万円を超える人の給与所得控除が195万円で頭打ちになったためです。国税庁のNo.1410でも、令和8年分の給与所得控除は年収850万円超で195万円(上限)です。子育てや介護の負担がある世帯の増税分を和らげる目的で設けられたのが、この所得金額調整控除です。

サイトの計算機で、40歳未満・協会けんぽ東京・扶養控除の対象にならない16歳未満の子が1人の会社員について、令和8年分の所得税と2027年度の住民税がどれだけ減るかを出すと次のとおりです。

年収所得金額調整控除所得税の減少住民税の減少合計
860万円1万円2,100円1,000円3,100円
900万円5万円10,200円5,000円15,200円
950万円10万円20,400円10,000円30,400円
1,000万円15万円30,700円15,000円45,700円
1,200万円15万円35,200円15,000円50,200円

所得税は復興特別所得税を含みます。年収1,200万円の人は控除額が上限の15万円で止まりますが、所得税の税率が23%の帯に入るので、減る所得税は1,000万円の人より大きくなります。自分の年収で年末調整の精算額がどう変わるかは年末調整の還付金シミュレーションや年収900万円の年末調整の目安、年収1,000万円の年末調整の目安で確かめられます。

共働きの夫婦は2人とも受けられる

扶養控除は、1人の子をどちらか一方の扶養にしか入れられません。これに対して所得金額調整控除には、同じ世帯のどちらか一方だけという制限がありません。国税庁のNo.1411とNo.2676では、夫婦がともに年収850万円を超え、23歳未満の扶養親族にあたる子が1人いる場合、夫婦の両方がこの控除を受けられると説明しています。

たとえば上の表の条件で、夫婦がそれぞれ年収900万円なら、2人合わせて3万400円税金が減ります。子を自分の扶養控除の対象にしていない側も、自分の申告書に子を書いて控除を受けられるので、「扶養は配偶者に入れているから関係ない」と考えて欄を空けたままにしないよう注意が必要です。

年末調整の申告書の書き方と、出し忘れたとき

令和8年分の年末調整では、所得金額調整控除申告書は「基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という1枚の用紙の一部になっています。書く流れは次のとおりです。

1つ目に、用紙の「要件」の欄で、上の3つの要件のうち当てはまるものにチェックを入れます。国税庁の案内では、どの要件にも当てはまらない場合はこの控除を受けられません。2つ目に、対象になる扶養親族や特別障害者の氏名・生年月日など、用紙の欄が求める事項を書きます。3つ目に、同じ用紙の基礎控除申告書の欄で自分の合計所得金額の見積額を書きます。基礎控除の欄の書き方は基礎控除申告書の書き方で、ほかの書類も含めた全体の流れは年末調整の書き方がわからない人へで整理しています。

提出の期限は、No.2676によるとその年の最後の給与を受け取る日の前日までです。実際には勤務先がそれより早い締め切りを決めているので、その日までに出します。年末調整で出し忘れた場合は、翌年の確定申告でこの控除を受けられます。また、給与と公的年金の両方がある人向けのもう1種類の所得金額調整控除(最大10万円)は年末調整では受けられず、確定申告が必要です。

よくある質問

Q. 子どもが16歳未満で扶養控除がありません。それでも書くのですか。
書きます。16歳未満の子も扶養親族にあたるので、年収が850万円を超えていれば23歳未満の扶養親族がいる要件を満たします。

Q. 子どもを配偶者の扶養に入れています。私も受けられますか。
受けられます。この控除は扶養控除と違い、同じ世帯のどちらか一方に限るという制限がないので、自分の年収が850万円を超えていれば対象です。

Q. 年収が850万円を超えるか、年末にならないとわかりません。
判定は年末調整の対象になる1年分の給与の総額(12月の給与・賞与を含む)で行い、最終的に850万円以下なら控除額はゼロです。超えるか迷うときは、申告書を出す前に勤務先の担当者に確かめます。

Q. 子どもが大学生でアルバイトをしています。
令和8年分は、子の所得が62万円以下(給与だけなら年収136万円以下が目安)なら扶養親族にあたります。これを超えると扶養親族ではなくなるので、23歳未満でもこの要件には当てはまりません。

控除の適用は、年収・家族の所得・障害の区分などで変わります。ご自身が対象になるかは、勤務先の担当部署や税務署でご確認ください。

出典: 国税庁 No.1411 所得金額調整控除、国税庁 No.2676 年末調整で所得金額調整控除の適用を受けるとき、国税庁 No.1410 給与所得控除、国税庁 No.1180 扶養控除、国税庁 No.1160 障害者控除、西宮市 所得金額調整控除(個人市民税)