雇用保険から出るお金は、離職したときに65歳未満なら失業保険(基本手当)、65歳以上なら高年齢求職者給付金と、制度そのものが切り替わります。基本手当は90〜240日分を4週間ごとに受け取るのに対し、高年齢求職者給付金は30日分か50日分を一度に受け取る一時金です。離職前の月給が25万円・雇用保険に20年以上入っていた人が自己都合で辞める例では、64歳での離職は約79万円、65歳での離職は約29万円で、約50万円の差が出ます。

ただし、65歳前に特別支給の老齢厚生年金を受け取っている人は、基本手当を受ける間その年金が止まります。どちらの時期に辞めるかは「給付の額」と「年金が止まるか」の2つを並べて考える必要があります。以下の金額は、令和8年8月1日以降に適用される基本手当日額の基準で計算した概算です。

64歳と65歳の退職で変わること(比較表)

まず、2つの制度の違いを並べます。被保険者期間は雇用保険に入っていた期間のことです。

項目65歳未満で離職(基本手当)65歳以上で離職(高年齢求職者給付金)
受け取り方4週間ごとの失業の認定日に、28日分ずつ認定を受けたあと一括(一時金)
日数(自己都合など)被保険者期間10年未満90日、10〜20年未満120日、20年以上150日被保険者期間1年未満30日分、1年以上50日分
日数(解雇・倒産など)被保険者期間に応じて90〜240日同じく30日分か50日分
給付率60〜64歳は賃金日額の45〜80%賃金日額の50〜80%
受給に必要な加入期間原則、離職前2年間に被保険者期間12か月以上原則、離職前1年間に被保険者期間6か月以上
老齢厚生年金との関係特別支給の老齢厚生年金などを受けている人は、受給中その年金が止まる年金は止まらず、両方受け取れる

日数の差が大きいのが特徴です。60〜64歳の解雇・倒産などによる離職(特定受給資格者)では、被保険者期間が1年以上5年未満で150日、5年以上10年未満で180日、10年以上20年未満で210日、20年以上で240日になります。

月給25万円の例でいくら違うか

離職前6か月の月給(賞与を除く)が毎月25万円、雇用保険の被保険者期間が20年以上の人で計算します。賃金日額は25万円×6か月÷180日=8,333円です。サイトの失業保険の計算機と同じ計算式(令和8年8月1日以降の基準)で出すと、次のようになります。

離職の時期・理由日額日数合計の目安
64歳・自己都合5,264円150日約79万円
64歳・解雇など5,264円240日約126万円
65歳以上(理由を問わず)5,776円50日分約29万円

65歳以上の方が日額は高くなります。60〜64歳の計算式は給付率の下限が45%で、同じ賃金日額でも低めに出るためです。それでも日数が50日分に限られるため、合計では自己都合の64歳離職と比べて約50万円、解雇などの64歳離職と比べると約97万円少なくなります。月給20万円なら64歳・自己都合で約74万円、65歳以上で約25万円、月給30万円なら約80万円と約32万円です。自分の月給で確かめたいときは月給25万円の失業保険の目安から金額を変えて見られます。

なお、基本手当日額には年齢区分ごとの上限があり、毎年8月1日に見直されます。60〜64歳の上限は令和8年8月1日から7,830円です。月給がおおむね50万円を超える人は上限に当たるため、表の比率どおりには増えません。

65歳前に辞めると年金が止まる人がいる

日本年金機構の案内では、特別支給の老齢厚生年金や、繰上げ受給をした老齢厚生年金を受けている人がハローワークで求職の申込みをすると、申込みの翌月から、基本手当の受給が終わるまでの間、その年金が止まります。厚生労働省の年金のQ&Aでも、失業給付による老齢厚生年金の停止は65歳未満の人に限られ、65歳以上であれば両方を受け取れると説明されています。

特別支給の老齢厚生年金は、生年月日で対象が決まっています。男性は1961年(昭和36年)4月2日以後に生まれた人には支給がなく、2026年に64歳になる男性は対象外です。女性は1966年(昭和41年)4月1日以前に生まれた人が対象になりえます。つまり、64歳での離職で年金との調整が問題になるのは、主に特別支給の老齢厚生年金を受けている女性と、老齢厚生年金を繰上げ受給している人です。

年金の月額が基本手当の月額(日額×約30日)より多い人は、64歳で基本手当を選ぶと、止まる年金の方が大きくなる場合があります。年金額は「ねんきん定期便」やねんきんネットで確かめられます。65歳以降の年金の目安は厚生年金の早見表にまとめています。

どちらにするか考えるときの3つの材料

1つ目は、次の仕事をすぐ探すかどうかです。基本手当も高年齢求職者給付金も、働く意思と能力があって仕事を探している「失業の状態」が条件です。完全に引退して仕事を探さないなら、どちらも受け取れません。

2つ目は、65歳まで働いた場合の給与です。65歳を待って退職すれば、その間の給与と、厚生年金の加入期間が延びる分の年金の増額があります。給付の差の約50万円と、待つ間に入る給与を並べると、判断しやすくなります。再雇用で給与が下がっている人には、65歳になる月まで高年齢雇用継続給付が出る場合があり、その額は高年齢雇用継続給付の計算で確かめられます。

3つ目は、退職の理由と時期による制限です。どちらの給付も、離職票を出して求職を申し込んでから7日間の待期があり、自己都合の退職ならさらに給付制限があります(2025年4月以降の離職は原則1か月)。また、受け取れるのは離職日の翌日から1年以内で、高年齢求職者給付金はこの期限の延長ができません。基本手当の受け取り方の流れは失業保険はいくら?で詳しく説明しています。

よくある質問

Q. 65歳の誕生日の直前に辞めれば、基本手当を受けられますか?
離職日の時点で65歳未満であれば基本手当の対象です。誕生日の近くで離職日を決める場合は、どちらの給付になるかを事前にハローワークで確認しておくと確実です。

Q. 65歳以上で年金を受け取っていても、高年齢求職者給付金は申請できますか?
申請できます。失業給付で老齢厚生年金が止まるのは65歳未満の人に限られるため、65歳以上なら年金と高年齢求職者給付金の両方を受け取れます。

Q. 高年齢求職者給付金の手続きはいつまでですか?
受け取れる期限は離職日の翌日から1年間で、基本手当のような受給期間の延長はできません。期限が近いと、残りの日数分しか支給されないことがあるため、離職票が届いたら早めにハローワークで求職の申込みをします。

金額は令和8年8月1日以降の基本手当日額の基準による概算です。実際の日額・日数・年金との調整は、ハローワークで受給資格の決定を受けたときの受給資格者証と、日本年金機構からの通知で確認してください。

出典: ハローワーク 基本手当について、ハローワーク 基本手当の所定給付日数、厚生労働省 離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>、厚生労働省 雇用保険の基本手当日額が変更になります(令和8年8月1日から)、厚生労働省 基本手当日額の計算式及び金額(令和8年8月1日~)、日本年金機構 失業給付・高年齢雇用継続給付を受けるとき、厚生労働省 年金と失業給付の調整についての説明資料、日本年金機構 特別支給の老齢厚生年金