退職後の住民税が一度に払えないときは、納期限が来る前に、住んでいる市区町村の納税の窓口に相談するのが出発点です。一時に払うと生活が成り立たない事情があれば「換価の猶予」を申請でき、認められると原則1年以内の範囲で分割して払え、延滞金の全部または一部が減免されます。申請できるのは、その税の納期限から6か月以内です。会社の倒産や解雇など、自分の都合ではない失業で収入がなくなった人は、住民税そのものを減らす「減免」の対象になることもありますが、こちらは納期限までに申請しないと原則使えません。

たとえば2025年の給与が400万円(40歳未満・扶養なし)の人の令和8年度の住民税は年17万6,700円で、2026年9月末に辞めると、天引きされなかった10月以降の分11万7,600円の納付書が届きます。さらに翌年度には、2026年1〜9月の給与300万円に対する住民税約11万7,400円がかかります。無職の期間にこの2つを合わせた約23万円をどう払うか、使える制度を順に整理します。

退職後に届く住民税はいくら?納付書が来るしくみ

住民税は前年1〜12月の所得に対してかかり、会社員は6月から翌年5月まで12回に分けて給与から天引きされます。退職して給与が出なくなると、天引きできなかった残りは本人が納付書で払う「普通徴収」に切り替わります。横浜市の案内では、1月1日〜4月30日に退職した場合は、本人が希望しなくても残りが退職金や最後の給与から一括で引かれます。6〜12月に退職した人は、希望すれば一括で引いてもらうこともできますが、何も言わなければ後日、納付書が届きます。

前年の給与400万円の人で、退職月ごとの残りの額を計算すると次のとおりです(令和8年度分。6月分15,000円、7月以降は月14,700円の天引き)。

退職日天引き済み残り(納付書または一括)
2026年6月30日15,000円161,700円
2026年9月30日59,100円117,600円
2026年12月31日103,200円73,500円
2027年3月31日147,300円29,400円(最後の給与などから一括)

これとは別に、退職した年に受け取った給与に対する住民税が、翌年6月に納付書で届きます。普通徴収の納期は、横浜市なら6月・8月・10月・翌年1月の4回です。2026年9月末に辞めた上の例なら、令和9年度分の約11万7,400円を4回に分けて、1回あたり約2万9,000円ずつ払う計算になります。前年の年収から自分の住民税を出すには住民税の計算機が使えます。

払えないときに使える3つの制度

住民税の納付が難しいときの制度は、大きく分けて次の3つです。どれも申請が前提で、要件や必要書類は市区町村ごとに決まっています。

制度使える主な場面申請の期限効果
換価の猶予(申請による)一度に払うと生活の維持が難しくなるおそれがあるその税の納期限から6か月以内原則1年以内で分割・先送り、延滞金の軽減
徴収の猶予災害・盗難、本人や家族の病気・けが、事業の休廃業など事由があるときに申請原則1年以内で分割・先送り、延滞金の軽減
減免倒産・解雇・病気による失業などで所得がなくなった、大きく減った納期限まで税額そのものが減る・なくなる

仙台市の案内によると、換価の猶予は「生活の維持が困難となるおそれ」があり、納期限から6か月以内に申請した場合に、1年以内の期間で認められることがあります。ただし、申請する税とは別に、すでに滞納している市税や払っていない延滞金があると、申請による換価の猶予は認められません。猶予が認められると、その期間内で分割して払ったり、払う時期を遅らせたりでき、差し押さえも猶予されます。原則として担保が求められますが、扱いは金額や自治体で異なるので、相談の時点で確かめてください。

退職そのものは、徴収の猶予の事由として挙げられていないことが多い点に注意が要ります。仙台市の例では、事由は災害・盗難、病気・けが、事業の損害や休廃業などです。病気で働けずに辞めた場合は徴収の猶予、そうでなければ換価の猶予が、退職した人の現実的な選択肢になります。

減免は「自己都合の退職」は対象外のことが多い

減免は、猶予と違って税額そのものを減らす制度です。横浜市の場合、前年の所得が一定額以下で、失職などによって1か月以上所得がないときや、前年より一定の割合以上所得が減ったときに対象になります。ここでいう失職は、会社の倒産や人員整理による解雇、病気による失業などを指し、自己都合や期間満了による退職は除かれます。預貯金などの資産や、生計を一にする家族の所得も審査されるので、申請すれば通るものではありません。

もう一つの大きな条件が期限です。横浜市では、納期限を過ぎた分や、すでに払った分は原則として減免できません。届いた納付書の第1期の納期限が迫っているなら、払う前・期限が来る前に窓口へ行く必要があります。申請には、雇用保険受給資格者証や離職票など退職日と離職理由がわかる書類、預金通帳など収入と資産の状況がわかる書類が求められます。減免の基準は市区町村の条例で決まり、減る割合も自治体ごとに違うため、住所地の市区町村のページで確かめてください。

放置すると延滞金と差し押さえ

納期限を過ぎると、本来の税とは別に延滞金がかかります。2026年(令和8年)の割合は、納期限の翌日から1か月を経過する日までが年2.8%、それ以降が年9.1%です。10万円を納期限から1年遅れて払うと、延滞金は約8,500円で、1,000円未満を切り捨てて8,000円ほどになります。2025年までの割合(年2.4%・8.7%)より上がっています。

延滞金より重いのが差し押さえです。地方税法では、督促状を出した日から10日を経過する日までに完納しないときは、市町村が滞納者の財産を差し押さえなければならないと定めています。対象は預貯金や給与などで、再就職したあとの給与が差し押さえられることもあります。猶予の制度は、納期限から6か月以内に申請し、ほかに滞納がないことが条件になっているものが多く、放置した期間が長いほど使える手が減っていきます。

相談に行く前に準備しておくこと

窓口では、なぜ一度に払えないのか、いつまでにいくらなら払えるのかを聞かれます。次の4点をそろえておくと話が早く進みます。

  1. 届いた納税通知書・納付書: 残りの税額と各期の納期限がわかります。
  2. 退職日と離職理由がわかる書類: 離職票、雇用保険受給資格者証、退職証明書など。減免の審査で使われます。
  3. 収入と資産の状況: 預金通帳、失業保険の受給見込み、再就職の予定。
  4. 月にいくらなら払えるか: 国民健康保険料・国民年金保険料・家賃などを引いた後の金額。

退職後は住民税のほかに、国民健康保険料や国民年金保険料も同時に始まります。国民年金は失業による特例免除で保険料を0円にできる場合があるので、退職後の国民年金の特例免除の申請も同じ時期に進めておくと、住民税に回せるお金が増えます。退職前で辞める時期を選べる人は、退職は何月がいいかで住民税の一括徴収の影響も確かめられます。辞めたあとの1年でかかるお金の合計は会社を辞めたらいくらかかる?の計算機で出せます。

よくある質問

Q. 退職後の住民税は、納付書の回数より細かく分けて払えますか?
納付書の期別(年4回など)より細かく分けたい場合は、市区町村の納税の担当課に相談します。一時に払うと生活の維持が難しい事情があれば、換価の猶予として、原則1年以内の範囲で分割の計画を認めてもらえることがあります。申請は納期限から6か月以内です。

Q. 失業保険をもらっていると、住民税は減りますか?
失業保険(雇用保険の基本手当)には、雇用保険法第12条で税金をかけられないと定められているため、翌年度の住民税の計算に入りません。ただし、退職した年に受け取った給与には住民税がかかるので、その分の税額は翌年度に残ります。

Q. 自己都合で辞めた場合、減免は受けられませんか?
横浜市などでは、減免の対象になる失職から自己都合や期間満了による退職が除かれています。その場合は、減免ではなく換価の猶予で、払う時期を分けられないか相談する流れになります。基準は自治体ごとに違うので、住所地の市区町村で確かめてください。

この記事は2026年10月時点の仙台市・横浜市の公表資料と地方税法・雇用保険法をもとにした一般的な解説です。猶予・減免の要件や必要書類は市区町村によって異なるため、実際の手続きは住所地の市区町村の税務・納税の担当課で確認してください。

出典: 仙台市 納税の猶予制度について、仙台市 もしも納期限までに納めなかったら、横浜市 個人市民税・県民税の減免及び森林環境税の免除について、横浜市 納税の方法、e-Gov法令検索 地方税法、e-Gov法令検索 雇用保険法