退職金は、給与や賞与とはまったく別の優遇されたルールで課税されます。結論から言うと、勤続20年なら800万円、勤続30年なら1,500万円までは税金ゼロ。多くの人の退職金は、ほぼ丸ごと手取りになります。

優遇その1: 退職所得控除(非課税枠)

勤続20年までは1年あたり40万円、20年を超えた部分は1年あたり70万円の非課税枠が積み上がります。勤続年数の1年未満の端数は切り上げです。式にすると「40万円×勤続年数(20年まで)+70万円×(勤続年数−20年)」。

優遇その2: 2分の1課税と分離課税

非課税枠を超えた部分も、そのまま課税されるのではなく半分にしてから累進税率がかかります(2分の1課税)。しかも給与と合算されない分離課税なので、退職金で税率ブラケットが押し上げられることもありません。長年の勤労への報奨という性格から、税制上もっとも優遇されている所得です。

自分の退職金でいくら引かれるかは退職金の手取り計算機で勤続年数と金額を入れれば1秒で出ます。

手続きはひとつだけ: 申告書を出す

会社から渡される「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、正しい税額が源泉徴収されて課税関係は完結します(確定申告不要)。出し忘れると一律20.42%が源泉徴収されるため、非課税のはずの退職金からも2割引かれます。その場合も確定申告すれば取り戻せるので、諦めないでください。

注意: iDeCoの一時金と近い時期に受け取る場合

iDeCo(確定拠出年金)を一時金で受け取るときも同じ退職所得控除を使います。会社の退職金と受け取り時期が近いと、勤続年数の重複部分が調整されて非課税枠が目減りします。目安として、iDeCoの一時金を先に受け取るなら退職金まで10年以上(2026年1月以後に受け取る一時金から。以前は5年)、退職金を先に受け取るならiDeCoの一時金まで20年以上空けないと、重複期間の調整の対象になります。両方ある人は、受け取り順序と間隔を退職前に設計しておくのが得策です。

退職前後のお金の手続き全体は退職した年の税金・保険料でやりがちな失敗5つにまとめています。

出典: 国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)、国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収、国税庁 No.2735 同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき