夫(妻)の転勤で退職したら失業保険は自己都合?特定理由離職者になる条件【2026年】

夫や妻の転勤についていくために仕事を辞めると、離職票では「自己都合」の扱いになります。ただし、転居で今の職場に通えなくなったことが理由なら、「正当な理由のある自己都合」として特定理由離職者に当たり、失業保険(雇用保険の基本手当)の給付制限がかかりません。2025年4月以降、ふつうの自己都合退職でも給付制限は原則1か月ですが、特定理由離職者なら7日間の待期が終わった翌日から支給の対象になります。
もう一つの違いは受給資格です。ふつうの自己都合は離職前2年間に雇用保険の加入期間が12か月以上必要ですが、特定理由離職者は離職前1年間に6か月以上あれば受給資格を得られます。一方で、給付日数は自己都合と同じ90〜150日で、配偶者の転勤が理由でも日数は増えません。月給25万円・32歳・加入3年なら、日額5,776円×90日の総額519,840円は自己都合でも特定理由離職者でも同じで、違うのは受け取り始める時期です。
配偶者の転勤が特定理由離職者になる条件
ハローワークの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲」では、正当な理由のある自己都合の一つとして、次のような理由で通勤が不可能または困難になって辞めた人を挙げています。配偶者の転勤は、このうち「別居を避けるため」の類型に入ります。
| 辞めた理由 | 特定理由離職者に当たる場合の例 |
|---|---|
| 配偶者の転勤・出向 | 配偶者が会社から遠方の事業所への転勤や出向を命じられ、同居を続けるために一緒に転居した |
| 配偶者の再就職 | 配偶者が通勤困難な地域の会社に再就職し、同居のために転居した |
| 結婚による転居 | 結婚に伴って住所が変わり、今の職場に通えなくなった |
| 家族と別居を続けられない | 配偶者や扶養する親族と離れて暮らすことが、家庭や経済の事情で難しくなった |
| 本人の転勤命令 | 自分が通勤困難な事業所への転勤を命じられ、家族と別居することになるため辞めた |
ここでいう「通勤困難」の目安は、厚生労働省の雇用保険の業務取扱要領によると、電車・バス・車・自転車などふつうの方法で通ったときの往復の所要時間(乗り継ぎを含む)がおおむね4時間以上かどうかです。通勤時間帯の便が極端に少ないなど、時間以外の事情が考慮される場合もあります。転居先から今の職場まで往復2〜3時間で通える場合は、通勤困難と認められない可能性があります。
なお「配偶者」には、婚姻届を出していない事実婚の相手も含まれます。結婚による転居の場合は、退職から転居までの間がおおむね1か月以内であることも判断の要素とされています。
自己都合と特定理由離職者の違いを表で比べる
同じ「自分から辞めた」退職でも、正当な理由があると認められるかどうかで次のように変わります。給付制限の短縮は令和7年(2025年)4月1日以降に離職した人に適用されています。
| 項目 | 正当な理由のない自己都合 | 特定理由離職者(配偶者の転勤など) |
|---|---|---|
| 受給資格 | 離職前2年間に加入期間12か月以上 | 離職前1年間に加入期間6か月以上でも可 |
| 給付制限 | 原則1か月(5年以内に自己都合で2回以上受給資格の決定を受けていると3か月) | なし(7日間の待期のみ) |
| 給付日数 | 90〜150日(加入期間で決まる) | 90〜150日(同じ) |
| 国民健康保険料の軽減 | 対象外 | 前年の給与所得を30/100として計算する軽減の対象 |
給付日数が倒産・解雇と同じ扱い(最大330日)になるのは、特定理由離職者のうち契約の更新がなかった雇止めの人で、2027年3月31日までに離職した場合に限られます。配偶者の転勤による退職はこの措置の対象ではありません。
月給25万円の例: いくら・いつから受け取れるか
サイトの失業保険の受給額計算機と同じ計算(令和8年8月1日改定の基準)で、離職前6か月の平均月給25万円・離職時32歳・雇用保険の加入3年の人を出すと、賃金日額は8,333円、基本手当日額は5,776円、給付日数は90日です。
| 項目 | 自己都合(給付制限1か月) | 特定理由離職者 |
|---|---|---|
| 基本手当日額 | 5,776円 | 5,776円 |
| 28日分(1回の認定で振り込まれる目安) | 161,728円 | 161,728円 |
| 総額(90日分) | 519,840円 | 519,840円 |
| 支給の対象になる日 | 待期7日+給付制限1か月の後から | 待期7日の後から |
総額は同じですが、特定理由離職者のほうが約1か月早く支給が始まります。転居直後は引っ越し費用や新しい家の初期費用が重なるため、この1か月の差は家計への影響が大きくなりがちです。月給別の金額は月給25万円の失業保険のような早見ページでも確かめられます。計算の方法そのものは失業保険はいくら?計算方法といつから・何日もらえるかで詳しく解説しています。
受給資格の差が効くのは、勤め始めて1年たたずに配偶者の転勤が決まった場合です。たとえば加入期間が8か月で辞めた人は、正当な理由のない自己都合だと受給資格がありませんが、特定理由離職者と認められれば受給資格を得られます。上の月給25万円・32歳の条件なら、90日分の519,840円を受け取れるかどうかの差になります。
離職票が「自己都合」でも、判断するのはハローワーク
会社が作る離職票の離職理由は、配偶者の転勤であっても「自己都合」と書かれることがよくあります。それでも特定理由離職者に当たるかどうかは、会社の主張と本人の主張の両方を聞き、資料で事実を確かめたうえでハローワークが判断します(ハローワークインターネットサービスの雇用保険のよくある質問)。離職票-2には本人が離職理由について意見を書く欄があるので、配偶者の転勤で転居し通えなくなったことを書き、手続きのときにその事情を伝えます。
ハローワークは、離職の経緯に事情がある場合は事実を確かめられる資料を持参するよう案内しています。配偶者の転勤の時期や転居先の住所がわかる書類など、何を持っていけばよいかは、転居先の住所を管轄するハローワークに事前に聞いておくと手続きが1回で済みやすくなります。受給手続きそのものは、転居後の住所地のハローワークで行います。
認められると、雇用保険受給資格者証の離職理由が特定理由離職者の区分になります。退職後に国民健康保険に入る場合は、この受給資格者証を市区町村の窓口に出すと、前年の給与所得を30/100として保険料を計算する軽減を、離職の翌日から翌年度末まで受けられます(届出が必要)。退職後の健康保険と税金の流れは退職後の税金と保険でまとめています。
よくある質問
Q. 夫の転勤についていくための退職は会社都合になりますか?
会社都合(特定受給資格者)にはなりません。自分から辞めた退職のうち「正当な理由のある自己都合」として特定理由離職者に当たる可能性があり、認められれば給付制限なしで受け取れます。給付日数は自己都合と同じ90〜150日です。
Q. 転勤の辞令が出る前に辞めても特定理由離職者になりますか?
配偶者の転勤と転居によって通勤が困難になったことが離職の理由として確かめられるかどうかで判断されます。時期の前後で扱いが変わるかは個別の判断になるため、辞める前に住所地のハローワークに聞いておくと安心です。
Q. 転居先から今の職場まで往復3時間なら対象になりますか?
業務取扱要領の目安は往復おおむね4時間以上なので、3時間だと通勤困難と認められない可能性があります。通勤時間帯の便の少なさなど、ほかの事情も含めてハローワークが判断します。
Q. 転居先ですぐに働けない場合はどうなりますか?
失業保険は、働く意思と能力があり求職活動ができる人が対象です。妊娠・出産・育児などですぐに働けない場合は、受給期間の延長を申し出ることで、働けるようになってから受け取れる場合があります。
特定理由離職者に当たるかどうかは、離職の事情や資料をもとにハローワークが個別に判断します。この記事は一般的な仕組みの説明で、個別の受給を保証するものではありません。
出典: ハローワークインターネットサービス 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要、ハローワークインターネットサービス 基本手当の所定給付日数、ハローワークインターネットサービス よくあるご質問(雇用保険について)、ハローワークインターネットサービス 雇用保険の具体的な手続き、厚生労働省 雇用保険に関する業務取扱要領(所定給付日数・特定理由離職者の判断)、厚生労働省 令和7年4月以降の給付制限の見直し、厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について