育休中に退職したら育児休業給付金は返還?いつまでもらえるかと失業保険の受給期間延長【2026年】
結論から書くと、育休の途中で退職することになっても、それまでに受け取った育児休業給付金は原則として返す必要はありません。厚生労働省の育児休業等給付のQ&Aでは、受給資格の確認を受けた時点で退職が予定されていた場合を除き、返金は不要とされています。さらに2025年4月1日以降に退職した人は、退職日までの日数分が支給の対象になりました(それより前は、退職日を含む支給単位期間の1つ前の期間までしか出ませんでした)。
たとえば育休前の月給が30万円の人なら、育休開始から180日までの給付金は月約20.1万円(日額6,700円)です。支給単位期間の途中で退職しても、退職日までの日数×6,700円が受け取れます。一方、最初から退職するつもりで育休を取った場合は、給付金の対象になりません。この記事では、返還が必要になる場合と不要な場合、いつまで支給されるか、退職後の失業保険をどう受け取るかを順に整理します。
返還が必要な場合と不要な場合
育児休業給付金は「育休が終わったら職場に戻る」ことを前提にした給付です。そのため、判断の分かれ目は退職を決めたのがいつかです。
| 状況 | 給付金の扱い |
|---|---|
| 育休中に、保育園に入れない・家族の事情などで退職を決めた | 返還不要。退職日までの分が支給される(2025年4月1日以降の退職) |
| 育休を始める時点ですでに退職が決まっていた | 支給の対象外。受け取っていれば返還を求められることがある |
| 育休から復帰した後に退職した | 受け取った給付金に影響はない |
「育休中に気持ちが変わった」こと自体は問題になりません。注意したいのは、育休前から退職の話が会社と進んでいたケースです。会社に退職の意思を伝えた時期は離職票などの書類から分かるため、事実と違う申告はしないことが大切です。判断に迷う場合は、会社を通じて管轄のハローワークに確認できます。
給付金はいつまでもらえる?退職日までの日割りの例
育児休業給付金は、育休開始日から1ヶ月ごとに区切った「支給単位期間」ごとに支給されます。2025年4月1日以降に退職した場合は、支給単位期間の途中で退職しても、その期間の初日から退職日までの日数分が支給されます。退職するときは、会社が「雇用保険被保険者資格喪失届」を出すのとあわせて、退職日までの分の支給申請をします。
金額は「休業開始時賃金日額×支給日数×給付率」で、給付率は育休開始から180日までが67%、181日目以降が50%です。サイトの育休給付金の計算機と同じ条件で出した例は次のとおりです(育休前6ヶ月の月給が毎月同じで、賞与は含まない)。
| 育休前の月給 | 180日までの月額(67%) | 181日目以降の月額(50%) | 退職月に15日分だけ出る場合(180日まで) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 134,000円 | 100,000円 | 約6.7万円 |
| 25万円 | 167,500円 | 125,000円 | 約8.4万円 |
| 30万円 | 201,000円 | 150,000円 | 100,500円 |
給付金は非課税で、育休中は健康保険料・厚生年金保険料も免除されています。ただし退職すると会社の健康保険・厚生年金から外れるため、退職後は国民健康保険と国民年金に入るか、配偶者の扶養に入る手続きが必要です。退職した年の税金と保険料の流れは退職した年の税金・保険料にまとめています。
退職後の失業保険:すぐには受け取れないので受給期間を延長する
失業保険(雇用保険の基本手当)は「働く意思と能力があり、仕事を探している人」が対象です。子どもの世話ですぐには働けない状態だと、退職してもその間は受け取れません。そのままにすると、原則として離職日の翌日から1年の受給期間が過ぎ、受け取れる日数が残っていても支給が終わってしまいます。
そこで使うのが受給期間の延長です。ハローワークの案内では、育児(子が3歳未満)などで30日以上働けない場合、働けなかった日数分だけ受給期間を延ばせます。延ばせるのは最長3年で、本来の1年と合わせて離職日の翌日から最長4年までです。申請は住所地のハローワークに出し、離職日の翌日から30日を過ぎてから早めに行うのが原則です。延長後の受給期間の最後の日までなら申請はできますが、遅れると所定の日数をすべて受け取れないことがあります。
もう一つ知っておきたいのが、受給資格の判定の特例です。失業保険を受け取るには、原則として離職前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上必要です。厚生労働省のQ&Aによると、この2年間に出産・育児などで30日以上続けて賃金を受けられなかった期間があれば、その日数を足した期間(最長4年)で判定されます。育休が長く続いた人でも、育休前に働いた期間で条件を満たせる場合があります。
育児を理由にした退職は「特定理由離職者」になり得る
ハローワークの「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」では、妊娠・出産・育児などで離職し、受給期間の延長を受けた人が、正当な理由のある自己都合退職(特定理由離職者)の一つに挙げられています。特定理由離職者にあたると、自己都合退職でかかる給付制限(2025年4月以降の退職は原則1ヶ月)がかからず、7日間の待期の後から支給の対象になります。最終的にどちらにあたるかは、会社と本人の主張をもとにハローワークが判断します。
金額の目安として、32歳・雇用保険の加入5年・離職前6ヶ月の月給が30万円だった場合を失業保険の計算機で出すと、基本手当の日額は6,307円、給付日数は90日で、総額は約56.8万円です(離職前6ヶ月の賃金をどの月で数えるかは離職票の記載でハローワークが判断するため、実際の額は変わることがあります)。月給ごとの目安は月給30万円の失業保険のような金額別のページで確かめられます。ほかに、教育訓練を受けると給付制限が解除される制度もあります(教育訓練で給付制限は解除される?)。
育休中に退職するときの手順
- 会社に退職日を伝え、退職日までの育児休業給付金の支給申請を頼む:資格喪失届とあわせて会社が手続きします。
- 離職票を受け取る:離職理由の欄が「育児のため」になっているかを確認します。
- 健康保険と年金を切り替える:退職日の翌日から国民健康保険・国民年金、または配偶者の扶養に入ります。
- ハローワークで受給期間の延長を申請する:離職日の翌日から30日を過ぎたら、早めに申請します。
- 働ける状態になったら求職の申し込みをする:保育園が決まるなど、仕事を探せるようになった時点で基本手当の手続きを始めます。
育休中の収入の全体像は育休中の収入はいくら?、退職後に受け取れる失業保険の計算方法は失業保険はいくら?もあわせて参考にしてください。
よくある質問
Q. 育休中に退職したら、これまでの育児休業給付金は返さないといけませんか?
育休を始めた後に退職を決めたのであれば、原則として返す必要はありません。返還が問題になるのは、育休を始める時点ですでに退職が予定されていた場合です。
Q. 育児休業給付金は退職日の前日までですか、退職日までですか?
2025年4月1日以降に退職した人は、退職日までの日数分が支給の対象です。2025年3月31日以前の退職は、退職日を含む支給単位期間の1つ前の期間まででした。
Q. 育休明けに復帰せずそのまま退職すると、失業保険はもらえますか?
育児ですぐに働けない間は受け取れませんが、受給期間の延長を申請しておけば、子が3歳未満の間で最長4年まで受給期間を延ばし、働けるようになってから受け取れます。育休で賃金がなかった期間は受給資格の判定の期間に足されるので、育休前の勤務で条件を満たせる場合があります。
Q. 育休中の退職でも退職金や住民税はどうなりますか?
退職金は会社の規程によります。住民税は前年の所得に対してかかるので、育休中・退職後も納付が続きます。退職月によって最後の給与から一括で引かれるか、納付書で払うかが変わります。
育児休業給付金・基本手当の支給の可否や離職理由の判定は、個別の事情をもとにハローワークが判断します。具体的な手続きは勤務先と住所地のハローワークにご確認ください。
出典: 厚生労働省 Q&A~育児休業等給付~、厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~、ハローワークインターネットサービス 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要、ハローワークインターネットサービス 基本手当について、兵庫労働局 受給期間の延長申請について