年末調整で追加で引かれるのはなぜ?戻らない・追加徴収になる理由と精算の時期【2026年分】
年末調整で税金が追加で引かれるのは、1年間に給与・賞与から天引きされた所得税の合計が、年末調整で計算し直した1年分の税額(年調年税額)に届かなかったときです。主な原因は、扶養に入れていた家族の年収が上限を超えた(2026年分は所得62万円、給与だけなら年収136万円が上限)、配偶者の年収が見込みより増えた、年収に占める賞与の割合が大きい、基礎控除申告書や控除証明書を出さなかった、の4つです。足りない分は原則として年末調整をする月の給与(通常は12月の給与)から差し引かれ、引ききれなければ翌月以降の給与から引かれます。
2026年分(令和8年分)は、最大104万円に引き上げられた基礎控除のうち毎月の天引きに入っていない分が12月の年末調整でまとめて精算されるため、戻る人が多い年です。サイトの計算機で、東京都の協会けんぽに入る40歳未満・独身・賞与なし・月給30万円の人を計算すると31,680円戻ります。一方、同じ条件で年収720万円の2人を比べると、月給60万円・賞与なしの人は49,480円戻るのに対し、「月給40万円+賞与年240万円(夏冬120万円ずつ)」の人は11,166円の追加徴収になるなど、条件によっては引かれる人が出ます。
追加徴収になるのは「毎月の天引き」が概算だから
会社が毎月の給与から引いている所得税は、源泉徴収税額表を使った概算の額です。国税庁の「令和8年分 年末調整のしかた」は、天引きの合計と1年分の税額が食い違う理由として、税額表が1年中同じ額の給与をもらう前提で作られていること、扶養の人数が変わっても過去の月までさかのぼって直さないこと、生命保険料控除などは年末調整のときにはじめて差し引くことを挙げています。年末調整は、このずれを年の最後にまとめて精算する手続きです。
ずれが「天引きが多すぎた」側なら還付、「足りなかった」側なら追加徴収です。年調年税額の計算の流れは年末調整の還付金はいつ戻る?で6つの手順に分けて説明しています。追加で引かれる人は、最後の手順の「天引きの合計−年調年税額」がマイナスになった人にあたります。
追加で引かれる・戻らない主な原因
追加徴収の原因は、毎月の天引きでは差し引いていたのに年末調整で消えた控除があるか、天引きの率がもともと低めだったかのどちらかです。国税庁の資料で確かめられる主なものを並べます。
| 原因 | 何が起きるか |
|---|---|
| 扶養に入れた家族の年収が上限を超えた(子の就職・アルバイトの増加など) | 毎月の天引きは扶養1人分を引いて計算していたのに、年末調整で扶養控除(16歳以上の一般の扶養は38万円、19〜22歳は63万円)がなくなる。扶養かどうかは1〜12月の合計所得で判定し、2026年分の上限は所得62万円(給与だけなら年収136万円)。19〜22歳の子は特定親族特別控除に切り替わり、年収159万円までは63万円がそのまま残り、197万円まで段階的に減る |
| 配偶者の年収が見込みより増えた | 配偶者の所得が95万円(給与だけなら年収169万円)以下なら毎月の天引きで1人として数えるが、それを超えると配偶者特別控除が段階的に減り、所得133万円(年収207万円)を超えると0円になる |
| 本人の所得が900万円を超えた | 毎月の天引きで配偶者を数えられるのは本人の所得が900万円以下のとき。年末に超えていると配偶者控除・配偶者特別控除の額が38万円から26万円(900万円超950万円以下)・13万円(950万円超1,000万円以下)に減り、1,000万円を超えると受けられない |
| 年収に占める賞与の割合が大きい | 賞与から引く所得税の率は前月の給与(社会保険料を引いた後)と扶養の人数で決まるため、月給が控えめで賞与が多い人は天引きが足りなくなりやすい |
| 基礎控除申告書を出さなかった | 年末調整の基礎控除は基礎控除申告書にもとづいて差し引くしくみなので、出さないと年末調整では基礎控除を引けない |
| 「翌年1月末までに出す」条件の控除証明書を出さなかった | 証明書が後から届く前提で生命保険料控除などを入れて年末調整した場合、期限までに出さないと控除を外してやり直し、不足分が引かれる |
| 年末調整のあとに給与が追加で支払われた | その年の給与に足して年末調整をやり直すため、税額が増えることがある |
一方で、生命保険料控除・地震保険料控除・住宅ローン控除の書類を出し忘れた場合は、もともと毎月の天引きでは差し引いていない控除なので、追加徴収にはならず戻る額が小さくなるだけです。住宅ローン控除は最初の年だけは確定申告が必要で、年末調整で受けられるのは2年目以降です(住宅ローン控除の年末調整)。また、月給12万円前後で毎月の天引きが0円の人は、そもそも返ってくる所得税がありません。
2026年分の計算例:戻る人と追加になる人
サイトの計算機(calc_core.py)で、2026年分の年末調整を条件別に計算しました。いずれも40歳未満・東京都の協会けんぽ加入・ほかの控除なし、扶養は16歳以上の一般の扶養親族(38万円)、毎月の天引きは令和8年分の電算機計算の特例、賞与の天引きは令和8年分の算出率の表で求めています。
| 条件 | 1年間の天引き | 年調年税額 | 年末調整の結果 |
|---|---|---|---|
| 月給30万円・賞与なし・扶養なし | 76,080円 | 44,400円 | 31,680円戻る |
| 月給30万円・扶養1人で天引き→年末に扶養から外れた | 56,640円 | 44,400円 | 12,240円戻る |
| 月給60万円・扶養1人で天引き→年末に扶養から外れた | 281,040円 | 309,200円 | 28,160円追加 |
| 月給60万円・賞与なし・扶養なし(年収720万円) | 358,680円 | 309,200円 | 49,480円戻る |
| 月給40万円・賞与年240万円(夏冬120万円ずつ)・扶養なし(年収720万円) | 298,034円 | 309,200円 | 11,166円追加 |
| 月給30万円・賞与なし・基礎控除申告書を出さなかった | 76,080円 | 97,500円 | 21,420円追加 |
扶養が外れたときに結果が分かれるのは、2026年分の基礎控除が所得によって変わるためです。毎月の天引きは基礎控除58万円を前提にしていますが、年末調整では合計所得489万円以下なら104万円、489万円超655万円以下なら67万円を引きます。月給30万円の人は年末調整で控除が46万円上乗せされるので、扶養控除38万円が消えても還付が残ります(扶養のままなら31,640円戻るところが12,240円に減ります)。年収720万円の人は上乗せが9万円しかないため、扶養控除がなくなった分を埋められず追加徴収になります。
賞与の例では、年収720万円の2人は年調年税額がどちらも309,200円で同じです。違うのは天引きの合計で、月給40万円・扶養なしの人は前月の社会保険料を引いた後の給与が約34万円なので、賞与に掛かる率は令和8年分の表で8.168%です。一方、この年収の人の課税所得は約365万円で、所得税率20%の区分に入ります。賞与の天引きが低い率のまま年240万円分積み上がるため、年末に不足が出ます。賞与からいくら引かれるかはボーナスの手取り計算で確かめられます。
追加分はいつ引かれる?金額が大きいときの繰延べ
年末調整で出た不足額は、年末調整をする月の給与(賞与を含む)から引かれ、引ききれない分はその後の給与から順に引かれます。追加徴収になった人の12月の給与明細で、所得税の欄がいつもより大きくなるのはこのためです。
不足額をまとめて引くと手取りが大きく減る人には、分けて払う方法があります。12月の不足額を引いた後の手取りが、1月から前月までの手取りの平均の70%未満になる人は、本人が「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」を作り、勤務先を通じて税務署に出して承認を受ければ、不足額を翌年1月と2月の給与に分けて引いてもらえます。提出の期限はその年最後の給与を受け取る日の前日までで、12月の給与にかかる通常の月の税額は繰り延べの対象になりません。対象になりそうなときは、12月の給与日より前に給与担当へ相談しておくと手続きに間に合います。
年末調整が終わったあとで扶養の人数が変わったときは、扶養控除等(異動)申告書を出せば会社が年末調整をやり直せます。やり直しは通常、源泉徴収票を渡す翌年1月末日までですが、扶養が減って税額が足りなくなる場合は、1月末を過ぎてもやり直すことになっています(国税庁 No.2671)。やり直しで出た不足分は、そのあとに支払われる給与から引かれます。
年末調整の前に確かめておきたいこと
上の原因のうち扶養や配偶者の収入に関するものは、年の途中の変化を会社が知らないまま12月を迎えると起こります。子どものアルバイトや配偶者のパートの収入は、12月分まで含めた1〜12月の見込みで扶養の上限(年収136万円など)を超えないかを確かめておくと、年末に慌てずに済みます。年の途中で扶養から外れることがわかったら、その時点で扶養控除等(異動)申告書を出し直すと、翌月以降の天引きが正しい額に変わるため、年末の不足額が小さくなります。配偶者の年収と控除の関係は配偶者控除・配偶者特別控除はいくらまで?、19〜22歳の子の控除は特定親族特別控除とは?で詳しく解説しています。
書類の面では、基礎控除申告書と保険料控除申告書を会社の締切までに出し、控除証明書が遅れて届く場合は1月末までに渡します。年末調整で戻る見込みか引かれる見込みかは、年末調整の還付金シミュレーションで賞与の有無や扶養の人数を入れて計算でき、年収720万円の条件別の結果は年収720万円の年末調整にまとめています。年末調整の結果は、翌年1月31日までに会社から渡される源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄で確認できます(見方は源泉徴収票の見方)。
よくある質問
Q. 年末調整の追加徴収はいつの給与で引かれますか?
年末調整をする月の給与(通常は12月の給与や賞与)から引かれ、引ききれない分は翌月以降の給与から引かれます。不足額を引くと12月の手取りが1〜11月の平均の70%未満になる人は、繰延べの承認を受ければ翌年1月と2月に分けて引いてもらえます。
Q. 2026年分は基礎控除が増えたのに、なぜ追加で引かれるのですか?
毎月の天引きが前提にしている基礎控除58万円に比べた上乗せは、合計所得489万円以下なら46万円ありますが、489万円超655万円以下では9万円、655万円超2,350万円以下では4万円です。扶養から外れた家族の控除(38万円以上)や、賞与の天引き不足のほうが大きいと、上乗せ分を差し引いても税額が足りなくなります。計算例では、月給60万円で扶養1人が外れると28,160円の追加でした。
Q. 年末調整のあとで子どもの年収が上限を超えていたとわかったら?
扶養控除等(異動)申告書を会社に出し、年末調整をやり直してもらいます。扶養が減って税額が足りなくなるやり直しは、翌年1月末日を過ぎても行うことになっています。足りない分は、そのあとに支払われる給与から引かれます。
計算例はサイトの計算機による概算で、社会保険料の加入先・住民税・ほかの控除によって実際の金額は変わります。ご自身の年末調整の扱いは、勤務先の担当部署または税務署にご確認ください。
出典: 国税庁 令和8年分 年末調整のしかた、国税庁 令和8年分 年末調整のしかた(年末調整の再調整)、国税庁 No.2675 年末調整の過不足額の精算、国税庁 No.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき、国税庁 A2-10 年末調整による不足額徴収繰延の承認申請、国税庁 賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和8年分)、国税庁 No.2030 還付申告、国税庁 No.7411 「給与所得の源泉徴収票」の提出範囲と提出枚数等